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古泉「駄目です・・・完璧に精神が向こうの方に行ったようですね。僕の呼びかけを妄想だと思ってしまっていました。」 みくる「そんな・・・・!それじゃぁキョン君は・・・!」 長門「精神離脱。この世界で言う、植物人間状態。」 植物人間となった病室に突然ハルヒが入りこんできた。 ハルヒ「キョン・・・ねぇどうしたのキョン、何で動かないの?」 古泉「涼宮さん・・・残念ながら、植物人間となっています。」 ハルヒ「そんな・・・私のせいで・・・・うぅ・・・う、うわぁぁぁん!」 大粒の涙を流しながら、ごめんねごめんねと呟くハルヒ。 みくる「(小声で)なんで・・・涼宮さんが望めばキョン君は復活するんじゃ・・・)」 古泉「どうやら彼女自身、諦めてるようです。間近にキョン君がはねられるのを見てしまいましたからね。」 古泉「(しかし皮肉なものです・・・涼宮さんはキョン君に守られたいと願った。 その結果、長門さんの親玉の一派が涼宮さんを殺そうと車で轢こうとし、それをキョン君はかばって轢かれた。)」 長門「・・・世界が・・・終わる。」 数日後、キョンを失ったハルヒの悲しみと自分への怒りの力は閉鎖空間として暴走し、やがてそれは現実に表れた。 地球は壊滅状態に陥り、ハルヒもまた力の暴走で気を失い、植物人間となった。 ハルヒが植物人間となり力が無くなったことで、朝比奈みくるは未来に帰った。 待っていた大人版朝比奈を見て、なんでこんなことになるって教えてくれなかったんですかと泣きながら叫んだと言う。 古泉は力を失い、壊滅した地球を生き延びる一介の青年となった。 古泉、朝比奈との別れ際の長門によると、涼宮ハルヒの精神は、キョンの精神と寸分の狂いもなく一致したと言う。 今頃、2人の精神の中でSOS団は復活しているのだろうか。 ごめんなさい無理ありすぎですorz
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角膜に映しだされている光景を、俺は夢だと思いたかった ハルヒと朝比奈さんが …… 血まみれで伏しているというのは 一体どういう冗談だ…? 気付くと俺は二人の前にいた 考えるよりも先に体が動いてしまったらしい 「大丈夫かよ!?おい!?!しっかりしろ!!!!!」 「キョ…キョン…!!みくるちゃんが…!!みくるちゃんがあ!!!!」 「しゃべるな!!お前だってケガしてんだろ!!?」 「違う…!!あたしはケガなんてしてない!!…みくるちゃんが…あたしを…あたしをかばって…!!!!」 …… え? じゃあ、ハルヒの服にべったり付いているこの血は何だ? …… 全部…朝比奈さんの血…… …!? 「う…ぅ、ぅぅ……!」 悲痛な様で喘ぐ…彼女の姿がそこにあった 「朝比奈さん!!!!しっかりしてください!!!!…朝比奈さん!!!!」 「ょ…ょかった…すず…涼宮さんがぁぶ、無事で…!」 「朝比奈さん!!?」 「わた…し…やくにた…てたかな…ぁ…ぁ…!」 理解した 彼女は秒単位という時間の中で自らハルヒの盾となった あのとき奴の一番そばにいた…彼女は 『ねえキョン君…私って本当にみんなの役に立ってるのかな…?』 つい先ほどの彼女の言葉が頭でこだまする 朝比奈さん…あなたは…そこまで思い悩んでいたんですか…!? 「あ…あたしのせいだ…!!あたしがボーっとして動こうとしなかったからみくるちゃんが…!! あたしのせい…あたしのせいでみくるちゃんが…っ!!いやあああああああああああああ!!!!」 頭を抱え絶叫しだすハルヒ 「よせ!!ハル」 言いかけてやめた。ふと、気付いたからだ…俺の横へと立っている人物の存在に。 「あなたは涼宮ハルヒを連れ、ただちにこの場を立ち去るべき。周囲の急激な悪化により 彼女の精神は極限状態。これ以上の錯乱は彼女の自我そのものを崩壊させる。 神としての記憶を覚醒しかねない極めて危険な状況。」 長門… …… …!! 今の俺に長門の声は届かなかった 「長門…!!お前…!!」 気でも狂ったのか、俺は長門に掴みかかっていた。 「…銃で必死に迎撃してくれてた古泉と違って…お前は一体何をしていた!? お前なら…!!今の攻撃からみんなを守ることなど造作もなかったはずだろう!? …なぜそれをしなかった!?答えろよ長門ッ!!!!答え」 頬に鈍い痛みが走った 俺は古泉に殴られた 「てめえ…!何しやがる!?」 「あなたこそ…こんなときに何をやってるんです!?涼宮さんを連れてただちに逃げろと… 今長門さんに言われたばかりでしょう!?どうしてそれに従おうとしないんです!?」 「お前…!!!今にも死にそうな朝比奈さんは無視か!?それに長門は…!」 「おいおいおい、九曜さん。ちょっとやりすぎじゃ?死人がでそうな状況なんだが。」 「…関係のない人に重傷を負わせてしまったぶん多少の罪悪感はありますが…ま、仕方ないですね。 ある意味当然の報いですよ。なんせ、私たちは問答無用で先ほど殺られそうになったわけですから。」 「-----------身の程を-------------------------------知るべき」 炎上した隣家の方角から歩いてくる… 不快な言葉を発する三人組が… …… そして、俺はこいつらの顔を知っている 未来人藤原 超能力者橘京子 天蓋領域周防九曜 …藤原。やっぱりてめえらの仕業だったわけか…! 「…長門さんと同程度か、それ以上の力を有する周防九曜…。天蓋領域という名の化け物に 彼女は…長門さんは情報操作をかけられ、一切の身動きがとれない状態でした。」 !! 「それでも彼女は抑圧されてもなお、力を行使し被害を最小限にとどめました… 朝比奈さんを助けることが叶わなかったのは…彼女の力が不完全だったためです…。 もちろん、僕の力量不足でもありますがね…。逆に、その不完全な力さえもなければ今頃僕も、 そしてあなたもタダではいられなかったでしょう。最悪の場合死んでいたかもしれません。」 …ッ! …よくよく考えてみれば、長門や古泉が死に物狂いで頑張ってる中、俺は何をしていた?? 自分を守ることで精一杯だったじゃないか…!?いくらハルヒと朝比奈さんとに 距離があったとはいえ…、、、、そんな俺に、長門を批判できる資格なんかない…!!! 「長門…俺はお前にひどいことを…!本当に申し訳ない!この通りだ…!」 俺は長門に…誠意をもって謝罪した。 「…私が周防九曜に対し後れを取ったのは事実。だから、あなたが謝ることは何一つない。」 「しかし…!」 「私のことはどうでもいい。一刻も早く涼宮ハルヒを連れてここから立ち去るべき。」 …さっきも言われたな。頭に血が上ってたが、確かにそんな覚えがある。 …… ああ、わかってるさ。そうせねばならないほど窮した事態だってことは だが 「朝比奈さんはどうすんだ!!?重体の彼女を放置して、俺とハルヒだけ逃げろってのか!!?」 「…朝比奈みくるは、これから私が全力を尽くして治療にあたる。」 「!確かにお前にならそれが可能だな…だが、あいつらの相手はどうすんだ!? お前が治療に専念する間……、、!!まさか古泉一人に戦わせるつもりか!?無茶だ…! 相手にはあの天蓋領域だって」 「…幸か不幸か、涼宮さんの重度の乱心により…この場は閉鎖空間と化しつつあります。 となれば、僕も超能力者として…本来の力を存分に行使できるようになります。」 古泉… 「わかってんのか!?それでも1対3には変わりねーんだぞ!?」 「…涼宮さんにもしものことがあれば世界は終わりです。あなたもそれは十分承知のはず。」 「しかし…!」 「…以前ファミレスにてみんなと誓ったではありませんか。我々は協力して…みんなで涼宮さんを守る!…とね。」 …こいつは、自分の死を覚悟しているのか?仲間を守るために… …… 長門も同様にそうだろう。 朝比奈さんにしてもそうだ、命を擲ってでもハルヒを守ろうとした。 みんな覚悟を見せつけている 絶対に3人の覚悟は無駄にできない!!!!なら、俺にできることは一つ 「ハルヒ!来い!」 強引にでもハルヒの手を握り、連れて行こうとする俺。 「嫌!!放してよ!!!!放して!!!!みくるちゃんが!!!!! みくるちゃんがああああああああああああッ!!!!!!」 ハルヒもハルヒで相当つらいんだろう…気持ちはわかる。だが、今は我慢するんだ…! みんなの意志を…覚悟を…どうか酌みとってやってくれ!!! そして…みんな… どうか死なないでくれ!!!! 俺は3人に背を向け、ハルヒとともに走りだした。 「…はん、ようやくお喋りは終了か。じゃ、とっととそこをどいてもらおうか。計画に支障が出る。」 「その先にいるターゲットに私たちは用があるんで。早くしないと逃げられちゃいますしね。 それに、閉鎖空間と化したこの場で猛威を揮えるのは…決してあなただけではないってことも どうかお忘れずに。だって、私も同様に超能力者なんですから。」 「それくらい承知の上です。それでも、あなた方が何を言おうと僕はここを通しません…!」 「古泉一樹…朝比奈みくるの治癒がもう少しで終わる。 そのときまで、どうか耐えしのいでほしい。終わり次第、私も参戦させていただく。」 「それは頼もしいですね。ぜひともお願いします。」 …… 「一応忠告はしてあげたんですけど。じゃあ、仕方ありませんね。」 「結局こうなるのか。面倒なヤツらだ…。」 「---------邪魔」 「「はぁ…はぁ…はあ!」」 一体どれくらい走ったのだろうか…、俺たちはすでに息をきらしてしまっている。 行く宛てもなく…ただただ走り続けた。藤原たちから離れることだけを考え…ただただ走り続けた。 轟音爆音が鳴り響く 火の手が上がっている …俺たちが先ほどまでいた場所からだ。 …… ところで、俺にはさっきから妙な違和感がある。市街地を走りぬけていて気付いたのだが… 人一人歩いていない、というのはどういうわけだ?確かに、時刻は夜の10時をとうに過ぎてしまっている。 ゆえに、人通りが少ないのは理解できる。だが、人一人見当たらないのはどう考えたっておかしい。 …これも長門、ないしは周防九曜の情報操作に起因したものなのだろうか? それともさっき古泉が言っていたように、この世界が閉鎖空間と化しつつあるから…? っ! ふとハルヒの手が放れる。酷く塞ぎ込み、その場にしゃがみこむハルヒ。 「もう…あたし…、走れない…!」 「…そうだな…随分走ったし、ちょっと休憩するか。」 「…ねえキョン」 「何だ?」 「そもそもさ…何であたしたちこんな必死になって走ってんの…??」 「……」 「さっきまでさぁ…あたしたちお菓子とか食べながらみんなで騒いでたじゃないのよぉ…!? あれは一体何だったの!!?夢!?どうして…こんなことになってるの…!!?」 「……ハルヒ…」 「この状況は一体何よ!??家が吹き飛ぶわ、破片が飛び交うわ…そのせいでみくるちゃんが…!!」 …ハルヒの疲弊は、どうやら単なる息切れによるものだけではないらしい。 「ち、違う…!!あたし…あたしのせいでみくるちゃんが!!みくるちゃんを助けないと!!」 「落ち着け!!落ち着くんだハルヒ!!気持ちはわかる!!わかるから…どうか落ち着いてくれ!!」 「嫌ぁ…!放して…!みくるちゃんが…みくるちゃんがぁ…!!」 ……、 最悪の状況と言っていい。俺は…どうすりゃいいんだ? 極限状態なまでに錯乱した…今のハルヒに一体どんな声が届くってんだ…?仮にハルヒの立場だったとして、 今頃俺はどうしていただろうか?発狂していたのだろうか?だとして、そんな半狂乱な俺を… 俺はどうすれば救ってやれる??何をすれば救ってやれる!? その瞬間だった 「あ…、ああっ…、……」 卒倒するハルヒ …… …ハル…ヒ? 「ハルヒ!?おいしっかりしろ!!!!大丈夫か!!?ハル」 !? 何だこの揺れは…?地震…??規模こそ小さいが、一昨日見た夢を思い出さずにはいられなかった… …… …冗談がすぎるぜ…世界が滅ぶのは12月23日の段取りだったはず… 今日はまだ12月1日だぞ…!?今日で…終わるのか?何もかも…!? 「今のハルヒの失神は…、まさか!覚醒しちまったのか!?」 …何なんだこの展開は…??ここまで頑張ってきたのに…頑張ってきたってのに、 全部水の泡で終わるのか?そんな…そんなこと…ッ! しかし いくら威勢を張ったところで、もはやどうしようもないことには変わりない。 ここまで【絶望的】という言葉が似つかわしい状況もない。 …… とりあえず、地震は収まったようだが… 俺が放心状態であることに、変わりはなかった… 「た、大変!!涼宮さん…その様子だと、神としての記憶を取り戻してしまったんですね…!」 はて、この場には俺とハルヒしかいないはず。ついに俺も幻聴が聞こえるなまでに廃物と化してしまったか。 「ふう…あなた達のこと探したんですよ…って、キョン君聞こえてますか…?大丈夫ですか!?」 !! 「あ、あなたは…」 「よかった…あなたまでおかしくなってたら、それこそ終わりだったわ…!」 「朝比奈さん!!」 いつしかお会いした大人朝比奈さんが…俺の目の前に立っている。 光明が射すとはこういうことを言うのだろうか? 例えるならば WW2独ソ戦にて、モスクワ陥落を【冬将軍到来】により間一髪のところで防いだソ連。 池田屋事件にて、維新志士らにによる窮地を別動隊の【土方歳三ら】に助けられた近藤勇。 日露戦争にて、物資・国力ともに限界だったところを【敵国の革命運動】により難を逃れた日本。 関ヶ原の合戦にて、数による劣勢を【西軍小早川秀明の裏切り】により勝敗を決した徳川家康。 元寇にて、大陸独自の兵器や戦法で撹乱する元軍を【神風(暴風雨)】により撃退した鎌倉幕府。 キューバ危機にて、米ソによる核戦争を【ケネディ大統領の働き】で回避した当時の世界。 ワールシュタットの戦いにて、【オゴタイ=ハンの急死】により領土を守り切った全ヨーロッパ諸国。 2・26事件にて、不運にも義弟の【松尾伝蔵陸軍大佐の身代わり】で暗殺を逃れた岡田啓介首相。 1940年にて、【杉原千畝リトアニア領事によるビザ発行】でナチスによる迫害から逃れたユダヤ人。 クリミア戦争にて、【フローレンス・ナイチンゲールの必死の看護】により命を救われた負傷兵たち。 …挙げればキリがない。 それくらい、絶望的渦中にある今の俺からすれば…彼女の存在は例文の【】に値する。 「朝比奈さん…俺は…。俺は!どうすればいいんですか!!?」 彼女が今ここにいるということは、間違いなく何かしらの理由があるはず。そうでもなければ、 朝比奈さん小の上司でもある彼女が…自らこの時代へとやって来ることなどありえない。 だとすれば、彼女は知っているはずだ…俺が今何をすべきなのかを…! 「落ち着いてキョン君!まずは状況をしっかりと把握しましょう。それによってあなたの成すべき事も… 決まってくるわ。だから、涼宮さんがこうして倒れるまでの間一体何があったのか…私に話してほしいの。」 話す内容によって、彼女が俺に与える助言もまた違ってくるのだろうか。 俺は…事の一部始終を洗いざらい打ち明けた。 …… 「なるほど…つまり、あなた達は藤原君たちに追われていたのね?」 「はい…そのせいでこの時代に来ていた朝比奈さんが…重傷を負ってしまって…っ!!」 「…それは。さぞかし大変だったのでしょうね。」 「なぜ驚かないんです!?彼女が消えてしまえば、大人であるあなたも消えてしまうんですよ!?」 「そのくらい心得てるわ。でもね…逆に言えば、今大人である私が この場にいる…生きてるってことは、つまり彼女はまだ死んでないってことよ。」 ! 「そして、あなたと涼宮さんがここまで逃げてくるまで随分な時間が経過してる。 ともなれば、私だけでなく長門さんや古泉君も無事だってことが推測できるわね。」 「意味がよくわかりません…どうして長門や古泉までも無事だって言えるんです!?」 「考えてもみて。私は…自分で言うのもなんだけど、戦闘に関しては全くの素人。ゆえに、 殺されるのも容易いわ。万一私の傷が完治したとしても、その後無事でいられる可能性は極めて低い。」 「……?」 「つまり、長門さんや古泉君が死んで私が生きてる状況ってのは 常識的に考えて絶対にありえないのよ。 だってそうでしょう?彼らは私なんかより桁違いに強いんだから。まあ…逆は可能性として十分ありえるけどね。 私が死んで彼らが生きてるっていうのは…自分で言っててちょっと悲しいけど。」 なるほど、確かに理屈に当てはめて考えればそうなる。…実に的確な指摘だった。 「ありがとうございます朝比奈さん。3人が生きてるってことがわかって…俺、安心できました!」 「ふふ、さっきよりも落ち着きを取り戻したようで何よりね。状況の把握は大切に…ね。」 朝比奈さんはこれを見越して話してたってのか…?さすが大人の貫録だ。 「それで藤原君たちは…どんな様子だったの?」 「どんな様子って、俺たちを殺しにかかってきたとしか…。」 「一体誰を殺そうとしていたのかしらね、彼らは…」 「…?ハルヒを除く俺たち全員なんじゃないですか?それからハルヒを拉致でもして… おおかた記憶を覚醒させるつもりでもいたんでしょう。…結果として覚醒しちゃいましたけど…。」 「でも…彼らがあなたたちの殺害、ないしは涼宮ハルヒの拉致を明言したわけではなかったんでしょ?」 …… 彼女は彼らの目論見について、何か知っているのだろうか…? 「…キョン君、今あなたが言った推理は、おそらくはずれよ。」 …はずれ??どういうことだ? 「単に、あなたたちは成り行きで彼らの障壁となってしまっただけ。彼らからすれば、 初めからあなた達は眼中になかったわ。ましてや、殺害など論外ね。」 …?彼女の言っている意味がよくわからない。 「じゃあ、藤原たちの目的は他にあったってことですか??…それは何ですか!?」 「…混み合った話はまた後にしましょう。涼宮さんをこのまま放置したまま話し続けるのも…胸が痛むわ。」 …確かにそうだ。倒れてるハルヒをどうにかせねばなるまい。 「とりあえず、彼女を背負ってこっちに来てくれないかしら?いつまでもここが安全とは限らない。 閉鎖空間と化しつつある現状では先ほどの地震といい、何が起こったっておかしくないもの。」 朝比奈さんの言う通りだ。 …俺は彼女の言うことに素直に従い、ハルヒのもとへ駆け寄った。 「…ハルヒ、大丈夫か…??」 …… 返事がない…どうやら本当に気絶してしまっている。俺は連れていくべく…ハルヒの肩を担ごうとする。 その時だったか ? 背中が妙に熱い …… …何だこの不快感は? いや、不快なんてもんじゃない…これは 生物に 本来あってはいけないものだ 「う…!!あ!!!!が…ああ…っ!!!!!」 猛烈な激痛 混沌とする意識 一体 何が起こった 俺は 背中を手で 触ってみる …… 何だ このどす黒い 赤い液体は 意識が 朦朧とする 「キョン君…さっき私に聞いてましたよね?自分が今成すべき事を。それはね、 死ぬことよ。」 「冥土の土産に教えてあげる。藤原君たちの本当の狙いはね、私の抹殺よ。」 「まさか、涼宮ハルヒを昏睡状態に陥れた犯人が 私だったなんて想像もしなかったでしょ。」 俺 を 立って 見下ろす こいつは 誰? 「まさか、ここまで上手く事が運ぶなんてね。アハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」 俺 を 見下し 笑う こいつは 誰? 意識が途絶えた …… ここはどこだ?辺りが真っ暗で何も見えない……そうか、あの世か。俺は死んじまったのか 2012年12月1日22時23分 俺は朝比奈みくるに刺殺された
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1.落下物 早朝サイクリングは第2中継点、つまり光陽園駅前にて終わりを告げる。 実はここまでも結構な上り坂で、ハルヒを乗せて自転車を漕ぐ俺はかなり必死だ。 ハルヒは俺を馬くらいに思ってるのか、「もっと早く漕ぎなさい!」なんて命令しやがる。 それでも毎日律儀に迎えに行っている俺って何なんだろうね。 駅前駐輪場に自転車を停め、そこからはハイキングだ。 いつも通り、ハルヒと他愛もない話をしながら坂を上る。 話題もいつも通りだ。 朝比奈さんのコスプレ衣装、週末の探索の話、SOS団の今後の活動予定、 何故宇宙人が現れないのか、未来人はタイムマシンを発明したのか、超能力ってのは具体的にどういう能力か。 そんなハルヒの話をもっぱら聞き役時々突っ込み役に徹して朝の時間を過ごす。 後半の3つの問題については、むしろ俺の方が語れることが多ってことはもちろん秘密だ。 朝比奈さんの卒業が控えているにもかかわらず、その話題は出さない。 おそらく、不安とか悲しみとかを意識的に避けているのだろう。 いつかは直面しなくてはならないんだけどな。 話はいつも文芸部室まで持ち込んで、教室に移動して朝のHRが始まるまで続く。 同じテーマの話題なのに、毎回違う話が出来るってのは一種の才能だな。 芸人にでもなればいい。俺は笑えんが。 まあでも、そんなハルヒを眺めながら過ごす朝の時間ってのも悪くはないさ。 今日もそんないつも通りの朝だと思っていたのだが── とんでもないことが起こりやがった。 学校に到着して、中庭を歩いているときだった。 正面に見えるのは隣接した中学校で、その向こうは山だ。 住宅開発もここまでだったらしい。つくづくなんて学校に通っているんだ。 その正面に見える山の上に、なにやら光る物体が見えた。 いくら早朝だからって、もう7時にもなるので外はそれなりに明るい。 星が見えるって時間帯ではない。この季節は明けの明星が見えるのか? 何だ? 超新星爆発か!? そう思っている間に、その物体は輝度を増し、あっという間に山の中に姿を消した。 ドォーーーーーン 遠くの方でそんな音が響いた気がした。 突然、しかもあっという間のことにしばらく呆気にとられていた俺は、ハルヒの声で正気に戻った。 「キョン!! 今の見た!? 何なのかしら!!」 100Wの笑顔を俺に向けて聞いてくる。まだ頭が回らずにいた俺は 「わからん」としか言いようがない。 「そうよ、UFOよ!! それしかないわ!! きっと裏山に墜落したのよ!!」 ちょっと待て! UFOだって? そんなわけあるか!! 「キョンも見たでしょ! 間違いないわよ! きっと侵略者ね。運転誤って墜落したのよ!」 UFOの操縦を運転と言うのかどうかという突っ込みはおいといて、とりあえず落ち着け! 「探しに行くわよ!! こんなチャンスは滅多にないんだから!!」 「おい、学校だろ!」 「そんなのどうでもいいわよ! いいからキョンも行く!!」 俺の手を強引に引いて歩き出すハルヒを、俺は何とかとどめた。 「あんな山に行くなら鞄が邪魔だ。登山道もないんだぞ。とりあえず部室に行こう」 果たしてあれがUFOだったのか何だったのか、俺にはさっぱり分からない。 UFOの可能性もある。いや、高い。なんせハルヒだからな。 ハルヒがそろそろ普通の毎日に飽きて何かしやがった可能性がある。 でなきゃあんな近くに落ちるか? しかも、運良く人家のないところだ。出来すぎてる。 何とか長門に連絡できないか? しかしハルヒの目の前では出来ない。 俺が思案していると、ハルヒに怒鳴られた。 「こらぁ! ボサッとしてない! 宇宙人が逃げて行くかもしれないじゃない!」 UFOだったとして、あの速度で落下して宇宙人が無事だとは思えないのだが。 「宇宙人なんだから助かる技術くらいあるでしょ! いいからサッサと行く!!」 部室に行くことだけは何とか同意してくれたハルヒは、俺のネクタイを掴むと走り出した。 何とか鞄を部室に置くことが出来た俺たちは、裏山探検隊を結成することになった。 隊長:涼宮ハルヒ 隊員:俺 以上。 ……無事に帰ることを祈っていてくれ。 「バカ言ってないで、張り切って行くわよ!!!」 ハルヒは部室でご丁寧にも「隊長」と書いた腕章を用意すると直ぐに飛び出して行った。 せめてSOS団が揃ってからにして欲しかったよ。やれやれ。 俺たちが見たのは『山に落ちた』という事実だけだ。 むやみに山に入って見つけられる訳もない。 歩き回っても見つからずそのうち諦めるさ、と思っていた。 いや、見つからないでくれと祈ってさえいた。 しかし、あれだけ派手に落ちたのに誰も騒いでないのは何故だろう。 これこそ、ハルヒの力かもしれない。 自分が第一発見者じゃなきゃ気が済まないだろうからな。 足場の悪い山道──いや、道ですらないな──を上っていく。 下草も刈っておらず、木の枝を避けながら歩くのは非常に骨が折れた。 そんな道を、ハルヒは物ともせずにずんずん進んでいく。 いつぞやの朝比奈さん(みちる)との登山とは大違いだな。 ハルヒなら、ずり落ちて俺が支えてやる何てことは逆立ちして登ったってないだろう。 いや、さすがのハルヒも逆立ちして登山なんて無理か。 「おっかしいわね。UFOが墜落したなら煙くらい上がってても良さそうなんだけど……」 そんなことをブツブツ言いながらも、ハルヒの表情は生き生きとしている。 爛々と輝かせた瞳には、全宇宙の星を内包しているかというくらいだ。 そんなハルヒの横顔を見ながら登山していると 「うわっ」 見事に足を滑らせた。 「あんたなにやってんのよ!」 ハルヒは俺をどやしつけながらもケラケラと笑っていた。 俺の醜態を見てそんないい笑顔するなよ。 あー 制服が泥だらけだぜ、畜生。 しかし、そんなハルヒを見ていると、さっきからの疑念が膨らんで行く。 本当にUFOなのか? お前がやったのか? ハルヒ。 しばらく歩いた後、ありがたいことに前半の疑念は晴れることとなった。 目の前が少し開けた。そんなに広くはない。 その真ん中に、直径2m程のくぼみが出来ていた。木の枝が散乱している。 掘り返されたような土肌は新しい。 そして、そのくぼみの真ん中に、明らかに周りの地質とは異なる黒い石が落ちていた。 「何これ?」 不思議そうな顔をしてハルヒが呟いた。 「おそらく、隕石だ」 果たして、人間が隕石の落下を目撃し、それを発見してしまう確率ってのは一体どれくらいのもんだろう。 宝くじ1等当たるより低い気がするぞ。 UFOの墜落を見る確率よりは高いだろうが。 俺は1つ溜息をつく。ここでいきなり第三種接近遭遇なんてことにならなくて良かった。 どっちが捕獲されるかはわからんが、下手すりゃ第四種だ。ハルヒなら捕獲しそうだな。 俺はすでに第三種接近遭遇は済ましてるけどな。 UFOは見ていないが。 宇宙人に殺されかけたのは、さて第何種と言っていいんだろうな。 ハルヒはクレーターの真ん中に近づくと、地面に半分埋まった黒い石を眺めた。 「隕石かぁ。実は小さいUFOってことはないかしら?」 しかしどう見ても石だった。 「でもこれも凄い発見よね! もしかしたら石じゃなくて地球外生命体の秘密の道具か何かかもよ!」 ドラ○もんかよ、じゃなくてしまった! そっちの可能性があったか! 普通なら寝言は寝て言えと片づけられる発言も、ハルヒが言うとシャレにならん。 やはり長門に連絡を取ってみるかと考えていると、ハルヒは無防備にその石を手に取った。 「おい! むやみに触るな!」 声をかけるのが遅かった。 ハルヒがその石を拾って立ち上がったとたん── その場に倒れた。 「おい! ハルヒ!! しっかりしろ!!!!」 何があった? いくら呼んでも目を開けない。 ハルヒを抱き起こして揺さぶってみる。 さっきまであんなに元気だったのに? ハルヒに何が起こった? 頼む、目を開けてくれ! すまん。先に気付くべきだった。 今回のことはハルヒ絡みか、さもなければ宇宙人絡みか。 何かある、とうすうす気がついていたのに、俺はハルヒを止めなかった。 「ハルヒ……!」 気がつくと、俺はハルヒを抱きしめていた。 畜生、本当に何が起こった。 いや、落ち着け。 原因は十中八九あれだ。あの隕石。 だったら俺にはどうしようもない。助けを呼ばなくては。 ようやく長門に電話することを思い出した。 『……』 いつもの無言で出てくれた。 「もしもし! 長門! 助けてくれ!」 相変わらず無言だが、構わずに続ける。 「今学校の裏山にいる。隕石が落ちたらしくてハルヒと捜していた」 『午前7時4分、地球の重力にとらえられた落下物を確認』 「その隕石をハルヒが触ったとたんに倒れちまった。意識が戻らねぇ」 『……そちらに行って確認する。待っていて』 電話は一方的に切れた。 と思ったら、長門がいた。 「長門!? どうやって来た!?」 聞いても俺に分かる答えが返ってくるはずもないのだが、一種の瞬間移動らしい。 量子変換がどうたらと言っていた気がするが、すまん。さっぱりわからん。 本当に何でもありだな。時間も凍結出来るこいつだ、空間移動なんて朝飯前だろう。 その長門はしばらくハルヒをじっと眺めた後、ハルヒの手にある隕石を眺めていた。 何とかその表情を読み取ろうとして、俺は不安になった。長門が1ミリほど顔をしかめた気がした。 「緊急事態」 その一言で、俺は目の前が真っ暗になった気がした。 「しっかりして」 長門の声で我に返る。 「涼宮ハルヒを学校へ。部室に行く」 いつになく緊迫した声で──と言っても俺にしか解らないだろうが──俺に言った。 「わかった」 どのみち俺に出来ることはない。 ハルヒを背負うと歩きにくい山道をそろそろと下りていった。 今思うと長門に任せた方が早く下りられたのだが、俺はハルヒを誰かに任す気にはなれなかった。 長門は誰かに電話をしていた。おそらく古泉と朝比奈さんだろう。 学校に着くと、校門で古泉と朝比奈さんが待っていた。 登校中の生徒も多く見られるが、気にしちゃいられない。 「直ぐに救急車とタクシーが来ます。部室ではなく病院に行きましょう」 そう言ったとたん、救急車とタクシーが現れた。どこかで待機していたのかもしれない。 ストレッチャーにハルヒを乗せ、俺も付き添いで救急車に乗り込んだ。 救急隊員は、やはりというか多丸兄弟だった。 「ハルヒ……」 手を握っても、握り返されることはない。 早く長門の説明を聞きたかったが、ハルヒの側を離れたくなかった。 おそらく古泉と朝比奈さんは、タクシーの中で状況を説明されているだろう。 やがて救急車は見覚えのある病院に着いた。これは予想の内だった。 『機関』なら、ハルヒに対しては出来る限りのことをするだろう。 驚いたことに、ハルヒは医師の診察を受けず、直ぐに病室へと運ばれた。 「診察はしないんですか?」 側にいた多丸(兄)さんに聞くと、そういう指示だと言う。 不思議に思っていると、長門が来て言った。 「診察は無意味。涼宮ハルヒは病気ではない」 2.レトロウイルスへ
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まだまだ寒さが残っているがもう菜の花が芽吹く季節になった。 1年程前に結成されたSOS団は右往左往ありながらも無事に続いている。 最近思うのだが何かがおかしい気がする。何がおかしいのか、と聞かれると 俺も困るのだが変なもんは変としか言いようがない。 宇宙人や未来人、超能力者が普通に出入りしているだけで十分変なのだが まぁ、それは置いておこう。そんなこといいだしたらキリがないしな。 こんなことを考えてたのも一瞬でもはや生活習慣の一部になりつつある SOS団のアジト、文芸部室へと足をはこんでいた。 ノックをすると可愛らしい声で返事が返ってきた「あっ、はぁい」 今日も似合い過ぎのメイド服を着た朝比奈さんはにこやかに微笑んで 音を立てているヤカンへと駆け寄っていった。 俺は部室を見まわした。 いつものさわやかな微笑みをうかべた古泉とこれまたいつもの無表情で ハードカバーを読みふけっている長門がいた。 「どうも。涼宮さんは一緒じゃないんですか?」 古泉はチェス盤とコマを用意しながら言った。1回も勝ったことないのに こいつもよくあきないな。 あいつは掃除当番だと言い俺は既に指定席になりつつあるパイプイスに 腰をおろした。 そんないつもの日常に俺は安心しきっていた。 まさかこんなことになるなんてな・・・。 俺は朝比奈さんの煎れてくれたお茶に今世紀最大の幸せを感じつつ 進級テストについて考えていると「どうしましたか?」 古泉が声をかけてきた。 「ちょっと将来のことを考えて暗澹たる気分にひたってたんだよ」 「いやぁ、あなたがそんな顔をしているのが珍しくて恋でもしてる んじゃないかと思いましてね」 それはない。絶対にない。 古泉のクスクス笑いを無視しつつあいつ遅いなぁなんて考えていた。 あいつと言うのはわれらが団長、涼宮ハルヒのことだ。 「涼宮さん遅いですねぇ・・・。」 俺と同じことを考えていたのは俺の天使朝比奈さんだ。 どっからみても中学生か小学生の高学年にしか見えないのだが 実は俺より年上らしい。 まぁ、実年齢は禁則事項♪らしいので本当のところは 知らないが・・・。朝比奈さんが何歳かなんて問題は置いておこう。 最近感じていた違和感も忘れ退屈な日常を過ごしていた。 ただ、今日は何かがおかしかった。 何故なのだろう。ハルヒが部室にこなかった。 次の日俺が心臓破りの坂(命名俺)をのぼっていると後からやかましい 男が歌いながら近寄ってきた。 「WAWAWA忘れ物~っとキョン今日もしけた顔してんなぁ」 お前ほどじゃないよと言いつつ俺は冷たい手に息を吹きかけた。 「それより谷口チャックが開いてるがそれはファッションか?」 「なっ、ありがとな。このままだと変態扱いされるとこだったぜ」 元から変態だろ。 「お前程じゃないぜなんせキョンなんてあだ名で呼ばれるなんて 俺は死んでも無理だ」 うるさい。俺も好きで呼ばれてるわけじゃないんだぞ。 なんて無駄なやりとりをしている間に学校についた。 教室にはいると俺の後ろの席には誰もいなかった。 いつもは俺より早く来ているんだがな・・・。 まぁ心配するだけ無駄だな。前にも遅かったことあったしな。 だが、ハルヒはこなかった。担任の岡部に聞いても連絡はきてない としか言わない。 ハルヒのことが気がかりで授業なんて聞いていられない。 理科の教師が谷口にチョークを投げつけて「おい!谷口!チャック を開けるな!」と言ってたのも聞き流す。 そして4時限目の終了を告げるチャイムが鳴るやいなや俺は部室棟へ 向かった。もしかしたらハルヒはここに泊まってるんじゃないだろうな なぁんてありえもしない事を考えながら、文芸室の扉をノックした。 「だっだれ!?」・・・ハルヒの声だ 「俺だ。それより教室にもこないでここで何してる」 ガチャガチャ・・・鍵閉めてやがる。 「キョン?何かよう?用がないなら帰ってよね」 「いや用があるわけじゃないんだがちょっと心配になってな」 「えっ・・・」 そこでハルヒは鍵を開けて顔を出してきた。 目が赤く少し腫れている。何かあったのか? とたずねると。 「ちょっと親父と喧嘩しちゃってさぁ・・・それで家出してきたの!」 やれやれ。それはいつだ? 「昨日の夜よ?」「ってことは何か?お前は昨日の夜からここにいたのか?」 「そうよ」そこで俺は言葉を失ったね。 ハルヒは笑っている顔を作っているのだが下手っぴすぎる。 笑顔の目の端の方、涙が滲んでいる。 残念ながら俺はそんな顔をしている女性にかける言葉は知らないから お前にかけてやる言葉はないぞ?古泉あたりならかまってくれるかも しれんが。 そのまま沈黙を保っているとハルヒが 「しばらく授業にはでないわ。あと、SOS団は休m」 「ちょっとまった。」 俺はハルヒの言葉を聞き終える前に言った。 「理由はわからんが、とりあえず親父さんも反省してるはずだし 心配もしてるはずだ。だから帰ってやれよ」 「なっ・・・」 何故だかハルヒは悲しそうな表情を作って 「・・・やだ」 泣きながら拗ねている子供のように言った。 やだって・・・。 「キョンの家いってもいい?」 俺が何を言おうか迷っているとハルヒが何を血迷ったか 俺の家に行きたいなんて言っていた。 「あぁ、家に帰るのは夜でもいいが親御さんにあんまり心配 かけんなよ」 「遊びにじゃなくて・・・しばらく泊めなさいよ」 今にも泣き出しそうにしてるハルヒに俺はダメだ・・・とは言えなかった。 それから俺は、他のSOS団メンバーに今日は部室にこなくてもいいと 伝えて俺は魔の坂(命名俺)をハルヒと2人で下っていった。 その間に会話はなかった。沈黙。 そのまま沈黙を保ちつつ家に帰ると妹が 「ハルにゃん!どうしたのぉ?キョン君ハルにゃん泣かしたの? うわぁ~。わ~るいんだわ~るいんだ」 そんな幼稚なことを言っていたがとりあえず無視しておいた。 そして事情をおふくろに説明すると 「ハルヒちゃんなら大歓迎よ。いつまででも泊まっていきなさい。」 「はい!ありがとうございます」おいおい・・・。本当に 何年間も泊まったらどうするんだ?まぁ、困るのは俺だけのようだが。 俺は妹+おふくろの行末を案じつつハルヒと一緒に俺の部屋に向かった。 その間ハルヒは小さく「ごめんね・・・」と呟いたのだが 聞こえない振りをしておく。人間できてるなぁ俺って。 部屋につくなりハルヒの元気は再活動をはじめやがった。 「ねぇキョン!今日の晩御飯は?あと、お風呂にも入りたいんだけど!」 やれやれ、と何度も封印しようと思った語を口にする。 こんな状況でもハルヒは元気な方がいいな。うん。 「風呂は沸いてるから好きにつかえ。晩飯は寿司の出前とるそうだ」 「わかったわ!じゃぁご飯食べてすぐお風呂つかわせてもらうね」 好きにしろ。 俺は3人分くらいの寿司を皿にのせて自室へと運んだ。 さすがのハルヒでも他人の家族の中にはいっていくのは抵抗があるかも 知れないと俺は考えたからだ。 部屋に入ると「遅い!」何て我がままなお客さんだ。 ほらよ。皿を渡して居間に戻ろうとすると 「ぇ?一緒に食べないの・・・」 「戻ろうと思ったが腹が減って動けねぇ。こっちで食べてくかな」 我ながらこれはひどい。 ハルヒは安堵したように吐息をもらした。 「いただきま~す!」 「いただきますっと」 ハルヒは大きく口を開けて寿司を放り込んだ。 うぉ。何故かハルヒが泣きながらバタバタと暴れだした。どうしたんだこいつ? 「キョンお茶!はやくっ!」 どうやら山葵が鼻にきただけらしい。 「バカキョン!遅いわよ!」 持ってきた緑茶を1瞬で飲み干してあろうことか俺の分まで飲みやがった。 それから30分もしないで寿司は空になりハルヒは風呂へ。俺は妹の宿題をやらされていた。 こんなの小学校でならったっけ?俺は習ってないぞ? と独り言をもらしつつ最終ページにある答えを解答欄に書き写した。 そんな作業を5教科分終わらせた頃に妹が俺を呼びに来た。 「ハルにゃんお風呂にいるんだけどぉキョン君呼んできてぇって言ってるの。 あっ、宿題終わったんだぁ。ありがとね」テヘっと舌を出してシャミセンをどこかに つれていった。さらばシャミセン。 しかし風呂で用があるって・・・なんだ?背中あらえとか頭洗えとかだったら 速攻で拒否してやる。理由?俺だって健全な高校生だからだ。 風呂場についた。うちの風呂は曇りガラスのドアなので中は見えることはないが それでも少し変な妄想をしてしまう。あぁくそ。あいてはハルヒだぞ? そんなことを考えつつ俺はドアをノック。 「・・・キョン?」少しこもって聞こえるのは風呂場に声が反射しているのだろう。 「ああ、んで何だ?用ってのは?」 「・・・がないの」ん?なんだって? 「着替えがないの!急に家を飛び出してきたんだもん・・・」 「俺か妹の服でよければ貸すが・・・妹のは無理そうだな」 「まぁ、仕方ないわ。あんたので我慢する」 俺はとりあえず自室に戻りTシャツとハーフパンツを手に取ったが そこで気がついた。下着がないな・・・。残念ながら俺はそういう趣味は ないから女物の下着なんて持ってないんだ。ほっ、本当だぞ? そんな事を考えながらもう一度風呂場へ。 「なぁ。Tシャツとハーフパンツは持ってきたんだが下着はどうするんだ?」 「あっ、考えてなかった・・・。」 やっぱりな。 その後の会話は思い出したくない。 俺が必死にチャリを漕いでいる理由と相違ない。 「キョン・・・下着だけでいいから買ってきなさいよ!」 「何で俺が?」 「だって裸で外出たらつかまっちゃうでしょ」 それはそうだが・・・。それでも俺が女性物の下着を買いに行くのは忍びない。 妹にいかせろと言ったらハルヒは 「妹ちゃんはキャラ物とか買ってきそうで危険そうだもん」 それにコンビニでいいからさとハルヒは付け足し制服のポケットから1000円札を 俺に渡した。「風邪ひいちゃうから速攻で買ってきてね。3秒以内で!」 おいおい3秒って・・・。それでも風邪なんかひかれたら目覚めが悪いので 俺はチャリを漕ぎ続けている。立ち漕ぎダッシュだ。 コンビニの前で急ドリフト。キレイに停めてコンビニへと入っていく。 織物が置いてあるコーナーの横に女性物の下着が売っていた。 色とか大きさは知らないので一番端にあった白いのを手に取った。 そしてレジへ・・・。今までにないドキドキと緊張感。やれやれ。 これは何プレイだ。店員は「738円です」と平坦な声で言ってくれた。 店員は40代くらいのおばさんだ。若い人だったらきつかったな。 ハルヒに渡された1000円札を店員に渡しておつりを貰うまでの時間が かなり長く感じた。まぁ、実際数秒しかたってないんだがな。 それから走ってチャリに向かい、急いでチャリを漕いだ。 行きよりも早いと思われるスピードで家に着いた。 息は切れ切れだ。だが待ってもいられないのでハルヒの待つ風呂場へ。 バスタオルを巻いたハルヒが立っていた。 「遅いわよキョン!すっごい寒かった!」 やれやれ。俺の超マッハダッシュ(命名俺)でも遅いというなら どんな速度ならお前の速いに該当するんだ? 「・・・って」「ん?」「・・・・てけ」 「ああ?」「服きるからでてけ~!」 ハルヒがそう叫んだときこう・・・バスタオルが ハラリっていうかフワっていうかそんな感じにハルヒの体 から剥がれ落ちた。目の前にはハルヒが生まれたままの姿で・・・。 お互いに違う理由で沈黙した。っていうか俺は気を失っていた。 「・・・ッン?・・・キョン?」 ハルヒの声が聞こえる。だが一度寝た俺はそう簡単には起きないぞ? 「このバカキョンっ!団長様の命令に逆らう気?死刑よ死刑。絞首刑!」 目が半開きの状態で真上を見るとハルヒが涙目で俺を殴り起こしていた姿 が目に入った。 サイズが合わなくてブカブカのTシャツ(俺の)とハーフパンツ(これも俺の) を着ているハルヒ・・・下から見ると色々と丸見えだぞ? 「あぁ・・・。なんか見てはいけない物を見てしまった気が・・・」 そう言うとハルヒが顔を真っ赤にして俺の襟を掴んできた。 「記憶から抹消しなさい!宇宙人と契約して!アブダクショーンって呼ぶのよ」 やれやれ。無茶言うなよな。もしアブダクションで長門や朝倉なんかが来たらどうすんだ 長門はいいが朝倉にはトラウマがある。しかももう立ち直れないくらいのな。 ハルヒはそのあともギャーギャーと騒ぎ立てていたが、心配して妹が来たあたりで 「まぁいいわ。不可抗力だったし」わかってんならこんなことするなよな。 やれやれ。まぁこれで大きな問題は解決だ。 「お風呂入ったから何か眠い・・・」 子供の用に両手で目をこするハルヒはすごくかわい・・・何考えてるんだ俺 相手はハルヒだぞ?(本日2回目) 「ああ。じゃぁ妹の部屋にでも布団ひいてやる。」 「何言ってるのよぉ・・・あんたのベット使わせて貰うわぁ・・・」 もう寝そうだ。まだ9時だぞ?俺の妹でさえまだ寝てない・・・ ってこいつ今何ていった?俺のベットで寝るって・・・俺はどこで寝ればいいんだ? 「下に布団ひけばぁ・・・。それとも一緒にねるぅ?」 眠気に負けて投げやりだ。 「んじゃぁ下に布団ひかせてもらうな」「うぅん・・・」 ハルヒは覚束ない足取りで俺の部屋へと向かった。 俺もその後ろを追って自室へとむかった。 部屋に入るやいなやハルヒは俺の枕へ顔を埋めた。使ってもいいが 涎はつけるなよと言い残し俺はさっさと布団をしいた。 まだ眠くなる時間でもなかったので長門から借りていた 【宇宙の原生物】とかタイトルのハードカーバーを広げた。 ハルヒが電気をつけるなとかうるさいのでスタンドライトを使って文字をたどった。 そうして何時間たったんだろうな。本に熱中してしまうと時間の経過が わからなくなる。1人の少女が上から降ってきた。 ここで言う少女は紛れもなくハルヒの事で上と言うのはベットのことだ。 結構派手に落ちたのだが俺がクッション代わりになったらしい。 どうりで腹が今までにないくらい痛いわけだ。 「おい、ハルヒ。起きろーおーい・・・だめか」 そのまま読書を続ける気にもなれずハルヒを起こそうとした。 声をかけても反応が無いので体をゆすってみた。 すると寝ていて力の入っていない体は俺の真横に・・・。 我ながらこれは失敗だったな。俺の顔面とわずか15cmくらいの所に ハルヒの顔が!?理性のタガが外れそうになったが相手はハルヒ相手はハルヒ と呟いてどうにか自分を押さえ込んだ。 とりあえず現状をどうにかしないとな・・・。 と、考えている時にハルヒの目から涙が溢れていた。 「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」 家族の夢でもみているのだろ。 泣いているハルヒをこのままほおって置くのも何なので体の動くまま 起こさないように弱い力で抱きしめてやった。 明日俺の体が五体不満足になっていても知ったことか。何故かおれはこうしなきゃ いけない気がした。気のせいかも知れないが。
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2人の絶叫だけが長門の部屋に残り、俺たちは奈落の底に落ちていった 永遠とも思える落下の後、ドスンと落ちた俺は腰を打ちつけていた しかし思ったほど衝撃は少ない やれやれと思って立ち上がろうとしたら、上からハルヒが落ちてきた ぐえっ 「アイタタタ・・・・・・」 おいハルヒ、早く下りてくれ。かなり重いぞお前 「ハァ?女子に向かって重いだって? あんた、全地球人類を敵に回すつもり? それとも何よ、あたしが重いって言うの? 重い女は嫌いって事?」 いやハルヒさん それとこれとは別でしょう ただ上から落ちてきただけですから 「やっぱちょっとダイエットすべきかなー。あたしさー、最近もしかしたらみくるちゃんより重いかも知れないのよね ねえキョン、どう思う? あたしもうちょっと痩せた方がいいの?まあ・・・あんたがそう言うんなら、頑張ってみないこともないけどさ」 ハルヒ頼む 悩み事はとりあえず俺の上から下りてからにしてくれ。じゃないとお前のいい匂いで卒倒しそうだ 「ふふーん、キョン あんたもだいぶ正直に物が言えるようになってきたわね 団長として嬉しいわよ。やっとあんたが真人間になりつつあると思うとね」 ああ もう好きに言ってくれ。こうやってるのも悪くない気分だけど今はそんな場合じゃないだろ 「分かってるわよもう」 ハルヒは俺の上から飛び降りて制服のスカートを直した 「ねえ。見てキョン!あれ!」 ハルヒが指さす方向には何人かの男女が見えた もちろんすぐに正体は分かる。SOS団と佐々木の1派が争っているのだ 「行くわよキョン!急いで!」 ハルヒは猛ダッシュで駆け出し、俺は慌てて後を追いかけた。30秒ほど走ってかなり近づいた 「有希!今助けるからね!」 そう叫んで走り寄ったハルヒの体は、ゴーンという音を立ててまたもや跳ね返された ハルヒ大丈夫か?吹っ飛んできたハルヒを危うく受け止め、そっと横たえた 「いったぁーっ・・・」 鼻を押さえてうずくまるハルヒを抱きかかえながら俺はあらためて、自分が来た世界を眺めた 空にはまばゆいばかりの星空がきらめき、地面は真っ黒で何も起伏がない 明らかに地球人の常識からはかけ離れた場所だ ここから15メートルほど離れた場所で戦う者たちの姿が見えた 激しく動き回っている赤い光はあれは古泉か。この世界じゃあいつの能力も使えるらしいな 少し離れた場所で右往左往している朝比奈さんは、なぜか時々点滅していた 数秒間消えたかと思うとまた現れる そして横たわっているのは長門だ。まだ意識が戻ってないのか ピクリとも動かないその長門の足元に立ちはだかり、周防九曜と思われる長い黒髪の女子と激しい攻防を繰り返しているのは・・・ 俺の背中にまた鳥肌が立った 振り下ろされるナイフの鈍い光沢、そして脇腹に突き刺さった冷たい金属の感触が、俺の全身から冷や汗を絞り出させた あ、あ、朝倉涼子がどうしてここにいる?しかも長門を守るようにして そうか、あいつは長門のバックアップだったっけ 長門がピンチなのを見て駆けつけたのか? 周防九曜は両手の指先から次々と光線のようなものを出し、朝倉を貫こうとする 朝倉涼子はまるでそれを割り箸でも掴んでるかのように手づかみにして、さらにはボキッと折っていた 両者の攻防は互角に見えたが、なかなか朝倉は攻勢に転じられないようだった 朝比奈さんから少し離れた所には、いた!あいつがいる 顔を見ただけで殴りつけてやりたいぐらいにムカつく野郎が あの藤原が朝比奈さんに手のひらを向け、朝比奈さんの動きに合わせて小さく振っている そのたびに朝比奈さんはあちこちに逃げ回り、時折りピカッと光って姿を消す 未来人同士の戦争がどんなものなのか、もちろん俺に知る由はないが、おそらくおれはあれでものすごい戦闘を繰り広げているのだろう 赤い光と化した古泉の周囲には分散した青い光が取り囲んでいる あれは橘京子のものなのだろうか、その1つが時々古泉に向かって突進し、古泉は全身でそれを跳ね返す 青い光は力を失って地面に落下するが、古泉からも光の破片がキラキラとこぼれ落ちており、多少はダメージを負っているのが分かった 予想していた通り、激しい戦闘の真っ最中だったが、俺にとっての気がかりはいまだに目を覚まさない長門と、そして彼らから少し離れた所にいる1人の少女だった ハルヒの言った通り、やはりあの新入生だった クルッと巻き毛の天然パーマなのか、繰り広げられる戦闘に目を輝かせながら手に持っているオーパーツを軽く左右に振り回している 俺はハルヒを地面に横たえて、ぶち当たったバリヤーを調べてみた 長門のマンションを覆っていた柔らかいものとは違って、ガラスのように固い物体だった 手で叩いてみてもガンガンと響くだけで向こう側には届かない どうやらあっち側からはこちらは見えないようだ 大声で古泉の名を呼んでみても何の反応もない 俺は再びハルヒを抱え起こし、揺さぶってみた。おいハルヒしっかりしろ、大丈夫か? 鼻を真っ赤に腫れ上がらせたハルヒがウーンとうなる 「いったぁー、何よ今度はいったい」 またバリヤーみたいだな。しかも今度はえらく固いぞ 「またこじ開けて入ればいいじゃないの」 ハルヒは鼻に手を当てながら立ち上がり、俺がやったようにドンドンとそれを叩いてみた 横たわったままの長門に懸命に声をかけるが当然反応がない 「うーん、ダメねえこれじゃ」 ハルヒは何事かをわめきながらひたすらバリヤーを殴りつけ、地面との隙間に指を突っ込んでこじ開けようとしている 何とかならないかハルヒ?このバリヤーをぶち破る方法は 「それは無理だよキョン」 また後ろから佐々木の声がした。こいつもついてきやがったのか 「どうやらあっちで起こってる事はこっちからはどうしようもないみたいだね」 おい佐々木、もういい加減にしろよ こんな無駄な争いをして何になるんだよ お前はこれで満足なのか? あいつらに戦わせてお前はここで高見の見物かよ 「だってそうしろって言われたんだからしょうがないじゃないか 大将はのこのこ敵前に出ていくことはないって それが仲間の意見ならば、僕は喜んで従うね」 仲間だと?何なんだよその仲間ってのは こんな変な世界で、ハンディがある相手を叩きのめすのがお前らの戦いなのか? それがお前らの仲間なのか? 「ふふっ。キョン 僕にとっては彼女たちはまだあまりよく知らない存在だ 突然目の前に現れて神様になって下さいとか言われていくら僕でもそんな事を真に受けたりはしないさ だけどねキョン、そんな事を言っている連中でも僕を慕ってくれてるんだ それを仲間と呼んでどこがいけないのかい?」 だったらお前も中に入って堂々と戦えよ 俺もハルヒもこの中に入れろ それから長門を目覚めさせてやれ お前らの下らん神様理論なんかはどうでもいい 条件を対等にしろ 何だかんだ言いながら結局お前らのやってることは卑怯以外の何物でもないじゃないか 長門の能力が怖いから眠らせて、ブチ切れたハルヒを恐れて中に入れようともしない それがお前の仲間とやらのしてる事じゃねーか 何が仲間だよアホらしい 俺たちの団長を見てみろよ アホで向こうみずで後先を考えない事ばっかりしてるけど、あいつの仲間を思う気持ちはお前なんかには負けはしない 何が大将は奥でじっとしてろだよ うちのハルヒを見てみろ あいつなら、団員を助けるために核融合炉にでも飛び込む覚悟はあるぞ それが俺たちの団長だよ。SOS団の自慢の団長だよ 「そしてキョンの大好きな彼女だってのか?」 そうだよ 俺はハルヒが大好きだ あんなバカな女だけど、俺たちを思ってくれる気持はこの銀河系の誰にも負けはしない あれが俺の大好きな女だ 俺は1人では何もできないけどな、ハルヒと一緒ならどこにだって行けるぞ 佐々木はちょっと遠い目になった 「変わったな・・・キョン」 当たり前だろ もうお前を自転車に乗せて塾に通ってた頃の俺とは全然違うんだよ 見つけたからな。一生かけて守ってやりたいと思う相手を 「うらやましいよ、キョンが そんな風に自分を変えられた君が」 お前は自分を変えようとは思わなかったのか? 「思わなかったよ だって変える必要がなかったからね このみんなに会えるまではね。チームSOSの仲間に出会うまでは」 チームSOS?何だそれは? 「ははは 君にはまだ言ってなかったかな?恥ずかしいんだけどちょっとインスパイアさせてもらったよ。僕たちのチームだ 『静けさを大いに楽しむための佐々木のチーム』だ」 それならSOSチームなんじゃないのか?順序が逆だぞ 「細かい事はいいんだよ別に 何となく語呂がよかったからさ」 SOSの名を聞きつけたハルヒが佐々木を見つけ、両腕をブンブン振り回しながらやってきた 「ちょっとあんた、いつまでこんな卑怯な事やってんのよ。あたしを中に入れなさい。もちろんキョンもね」 「それはできないわ涼宮さん。 みんなにきつく言われてるから。あなたが入れるのは最後の仕上げだけ」 「いいから早く入れなさい!今すぐに!」 「ご自分でお入りになったら?」 「ええそのつもりよ。キョン!もうそんな女は放っといていいから。体当たりしてでも突入するわよ」 はいはい団長さま 「キョン!本気でそんな事するつもりか?」 当たり前だろ。俺は団長のボディガードだ 団長の行く所ならたとえ地獄にでもお供するぜ ましてや仲間を助けるためなんだ。SOS団に不可能はないんだよ 「キョン!そんな優等生の分からずやに何言っても無駄よ。まあ同級生のよしみもあるんでしょうけどね」 「待って!それはさせられない」 佐々木の体が大きく震え、クリーム色をしたモヤモヤした物体がハルヒの体を包み込んだ 「ちょっと!何よこれ!動けないじゃないの!キョン!助けて!」 俺は急いでハルヒを包んでいる靄の中に飛び込んだ と思ったらハルヒの体を通り抜け、反対側に出ていた もう一度やっても同じだった 俺の指先はハルヒに触れる事もなく、そのまま通過して飛び出してしまう 何だこりゃ?ハルヒ? 「キョン・・・・・・」 待ってろハルヒ、すぐに助け出してやる おい佐々木、もうやめろ。ハルヒに手を出すんじゃねえ 他のヤツラならともかく、お前にこんな事をさせたくない だからハルヒに手を出す事だけはやめてくれ 「じゃあ君が身代わりになるかい?」 ああ それでいいのなら俺は構わない 「キョン!あんたいったい何言ってんのよっ!」 ハルヒ みんなを助けてくれ 長門を助けろ、お前ならできる 長門さえ起こしてしまえばこっちのもんだ 「ちょっとキョン!」 さあ佐々木、さっさとやれ。俺を好きにしていいからハルヒを助けろ 「ふっ 君が代わってくれても意味はないんだよ あくまで団長は涼宮さんだからね」 いいから変われ 俺とハルヒを入れ替えろ 「それはできない。今の時点での危険因子は涼宮さんだからね」 くっそう 引っかからないかさすがに 俺の背後にはクリーム色の靄にからめられたハルヒがもがいている 「キョン!キョン!」 俺は佐々木を睨みつけたままで 何か策はないかと思い巡らしていた バリヤーの向こうでの戦いはいったいどれぐらいの時間に及んでいるのか 古泉も朝比奈さんも、もちろん朝倉涼子も、もうかなりのダメージを受けているはず ほとんど防戦一方の戦いにはたして勝ち目はあるのか 仮に長門が目を覚ましたとしてあの調子で戦いに参加する事はできるのか? 幾つもの疑問が頭を駆け巡る 俺とハルヒはこのまま 仲間が必死で戦ってるのを見殺しにしてしまうのか・・・ 「キョン、キョン」 ハルヒの声も苦しそうだ。俺は佐々木に背中を向け、ハルヒの方に向かった ハルヒどうした?苦しいのか? 「大丈夫よ、動けないだけ だけどキョン、こんな悔しい想いは初めてよ。何もできないで負けちゃうなんて・・・ 有希・・・ごめんね・・・一番つらい時に一緒にいられなくて みくるちゃん・・・あんなに頼りなかったのに、必死で戦ってるのに何もしてあげられなくて 古泉くんも・・・いつもわがまま聞いてくれたのに、最後はこんな形になるなんて ごめんね・・・これじゃ団長失格だよね。偉そうな事ばっかり言ってたのに 結局何もできないだけだなんて」 俺の目の奥で何かがはじけた 何か真っ赤なものがパーンとはじけた 俺はゆっくり向き直り、佐々木に静かに告げた 佐々木・・・ハルヒを出してくれ、今すぐに 「それはできないと言っただろ 君に代わっても何の意味もない事ぐらい分かっているはず」 そうか・・・ 俺は肩を落とし、力なくうなだれた そして次の瞬間、全速力で佐々木に向かって走っていた もう何も考えられない ただ無性に腹が立っていた どうせ何もできないのなら、せめてこいつだけにはひと泡吹かせてやりたい 俺をバカにしたいのならいくらでもすればいい だけどこれだけは絶対に許さん ハルヒをバカにする事だけは許さない 俺たちの団長を、俺の大好きなハルヒをバカにする事だけは許せなかった 「ちょ・・・キョン?」 俺は上体を丸めて佐々木に襲いかかった 何かを叫んでいたような気がするが覚えていない ショルダータックルをぶちかますつもりだったのだが、予定した場所に佐々木はいなかった 空気が漏れるようなシュッという小さな音が聞こえたような気がする 俺は勢い余ってそのまま突進し、バリンという音とともにもんどりうって倒れ込んだ 「キョン!」 気がつくと空気の匂いが違っていた。血なまぐさい臭いが鼻をついた 誰の血の臭いなのかと頭を上げると、目の前には小さな女の子が倒れていた これは?どんなカラクリなのか、俺はバリアーを抜けたようだった そして俺が体当たりしたのはこの子なのか 俺の横に転がっている新入生の手に握られたオーパーツを見て、俺は本能に任せて行動した 素早くその手からオーパーツを奪い取り、バリヤーの外にいるハルヒに向かって走り出した いったい今日はどれぐらい走ってるだろうか。少しは運動能力の向上に役立つだろうか そんな事を考えていると耳元に誰かの声が聞こえた 「・・・・・・とうとう来た・・・私のきれいな・・・その瞳・・・・・・」 横目でちらりと見ると周防九曜が俺の動きを追っていた 長い黒髪がブラリと横に拡がり、次の瞬間、それが一斉に俺を目がけて飛んできた 追いつかれる前にバリヤーの外にたどり着こうと必死で走ったが、恐ろしいスピードで追いかける槍のような黒髪の方がはるかに早かった 「キョン!」 「キョンくん!」 誰かの悲鳴が聞こえたような気がした 俺の耳元にシュルルルといううなりが聞こえ、今にも無数の槍に貫かれるかと覚悟した瞬間、ブシュブシュブシュと何かが突き刺さる音が聞こえた ハルヒ・・・ ハルヒ・・・ 俺は・・・もう・・・・・・ あれ?痛みがない 呆然とする俺に何か柔らかいものが覆いかぶさった 「早く渡して!」 誰かにそう言われてハッと気がついた 聞き覚えのあるこの声は、朝倉涼子! 「あなたならあのバリヤーを貫通できるはず!走って!」 俺は異を唱える事もせず、ハルヒに向かって走った 再びシュルシュルといううなりが後ろから聞こえ、俺は首をすくめた ブシュブシュブシュ 「キョンくん・・・」 朝倉・・・ 俺の体にかぶさるようにして朝倉涼子が倒れ込んできた 暖かい液体が俺のシャツを濡らす。これは・・・血? 「キョンくん・・・あの時は本当にごめんね。 自分が間違っていたことがやっと分かった 長門さんの気持ちもね」 朝倉! 「せっかく戻って来られて、キョンくんにちゃんと謝ろうって思ってたのに。またこうなっちゃった しょせん私はやっぱり、ただのバックアップにすぎないって事かしら? さようなら、キョンくん。できたら私の事は、あまり悪い思い出にしないでほしいな」 朝倉! 体中を周防九曜の長い槍で貫かれた朝倉涼子は やがていつかのようにサラサラと砂になって崩れ落ちていった 俺はオーパーツをまだ持っている事を確かめた バリヤーの側にいるハルヒからはあと少しの距離だ 俺は残りの距離を猛ダッシュに賭けた。バリヤーの向こうにいるハルヒに手渡す これが突き破れなかったら、その時は俺も終わりだ 周防九曜の槍に貫かれて、朝倉のようにサラサラと消滅する事もできず、血にまみれた無残な死体を晒すのか オーパーツを持った右手をバリヤーの向こうにいるハルヒに必死で突きつけた ハルヒ、これを持ってこっちに入って来い! 不思議な事に、オーパーツは苦もなくバリヤーを突き抜けた 佐々木が作ったクリーム色の靄すらも通り抜けて、ハルヒはしっかりとそれを握りしめた また背後からシュルシュルと唸りが聞こえてきた。身を隠せるものは何もない。助けてくれる朝倉ももういない 俺は目を閉じた そして・・・・・・ 何も起こらなかった 体中を串刺しにされる感覚も、焼けるような激痛もなかった そして俺の後ろに誰かが立っている感覚を感じた こわごわ目を上げてみると、そこには見慣れた制服姿の小柄な女子が立っていた 周防九曜が放った長い黒髪の槍を片手で鷲づかみにしていた 「ああ・・・・・・あなたは・・・ここにいてはいけない存在・・・・・・不快な・・・とても不愉快なもの・・・・・・」 周防九曜は次々と槍を繰り出し、その女子はそれを片手で受け止め続けた 見上げる俺の全身に安堵感が広がる あまりの安堵に体中がガタガタと震え出すほどだった 長門・・・・・・ ついに復活したのか長門・・・ 長門は氷のような無表情を崩さないまま あの懐かしい淡々とした口調で 「・・・・・・お待たせ」 そうつぶやいて、九曜の攻撃を跳ね返し続けていた 「・・・・・・離れないで」 長門は右手で攻撃を受けとめながら左手をバリヤーの外に伸ばした 長門の左腕が5メートルぐらいに伸び、ハルヒの腕を掴んだ バリバリバリと激しい音を立てながら、バリヤーごとハルヒを中に引きずり込んだ 俺は転がり込んでくるハルヒをしっかり受け止めた これでついに役者が全員揃った。SOS団の勢ぞろいだ どんな仕組みになってるのかなんて俺には分からない だけど今、団長以下5人のSOS団メンバーがついに終結したのだ 形勢が一気に逆転した 長門はめまぐるしい動きで周防九曜の攻撃を防ぎながら詠唱し、古泉に群がっていた赤い光を叩き落とす さらには朝比奈さんと藤原との間に白い光の壁を作った 古泉は力を回復して再び橘京子に襲いかかり、朝比奈さんは変な悲鳴を上げながら 「わ、わた、わたたたたたーっ!」 と叫んで藤原と一緒に姿を消した ハルヒがバリヤーの中に入ったのを見た佐々木も中に入ってきて、クリーム色の靄を俺たちに向かって放ってきたが、オーパーツを握りしめたハルヒが無造作にそれを踏みつぶした 俺はしっかりとハルヒの手を握りしめていたが、ハルヒはその手をそっと放した 俺たちの前でガードしていた長門の前に出た すかさず周防九曜が槍を放つが、それらは全てハルヒの手前で力なく失速して落ちた ハルヒの全身から不思議な光が発光している 古泉が最も恐れていた事態がついに訪れたのか 自分の力を自覚したハルヒが、怒りのあまりにとんでもない大暴走を引き起こそうとしているのか? おいハルヒ 危険だぞ長門の後ろに戻れ 「・・・・・・やめなさい」 ん?ハルヒ? 「もうやめなさいって言ってるのよ」 初めて聞くハルヒの低い声だ 腹の底から響くようなハルヒの重低音だった 俺はこの時初めて気がついた 本気で怒った時のハルヒは口数が少なくなるのだと 「有希、もういいわ。無事で何より」 長門も攻撃を収めた 「古泉くん、元の姿に戻りなさい。みくるちゃんも、もう帰ってきなさい」 古泉は赤い光球から人間の姿に戻り 「ふぇぇぇぇぇーっ。 7億年前まで遡っちゃいましたぁ」 と言う朝比奈さんは気絶した藤原の手を掴んで戻ってきた 佐々木率いるチームSOS(この名前は使いたくないな)も攻撃の手を休め じっとハルヒを見つめている オーパーツを奪われた新入生はキョトンとしていたが ニッコリ笑って立ち上がった ハルヒはゆっくり歩いて古泉の前に立った さすがの古泉も疲れた表情で肩で息をしていたが、近づいてきたハルヒを見てわずかに頬を緩めた しかし次の瞬間、俺の心臓も凍りついた パンと乾いた音がして、ハルヒが古泉の頬を叩いていた 「副団長がこんなつまらない争いごとに巻き込まれてどうするのよ! 私の指図もなしに独断専行は許さないわよ!」 古泉は呆然としていたが、ハルヒの目に浮かんでいた大粒の涙を見て顔をこわばらせた 「申し訳ありません、団長」 ハルヒはそのまま朝比奈さんの元に向かい、やはり頬を叩いた 「みくるちゃんはあたしのかわいいマスコットなんだから、こんな危険なことしちゃダメじゃないの!」 朝比奈さんは目をくるくるさせていたが、ハルヒに抱きしめられて大声で泣き出した 「みくるちゃん、ごめんね、無理させて。あたしが早く来れなかったばっかりにこんなひどい目にあわせちゃって」 「すっすっすっ涼宮さーん」 しばらく抱き合っていた2人だったが、やがてハルヒが体を離した 再び俺と長門の前に戻ってきて、やはり長門の頬もパンと叩いた 長門なら軽く避ける事もできたのだろうが、黙ってハルヒの平手打ちを受けた 「有希、有希、あんたはね、何でも1人で抱え込んでるんじゃないの つらかったら、1人でいるのがつらい時は電話しなさいっていつも言ってたでしょ? あたしたち仲間なんだから、どうして今まで何の相談もしてくれなかったのよ!」 抱きしめられてもまだ無表情の長門だったが、大きく見開かれたその両目から、大粒の涙がぽろりとこぼれた 「・・・・・・申し訳ない」 そしてハルヒは俺の前に戻り、俺をグーで殴りつけた おいハルヒ、何で俺だけグーパンチなんだよ 「うるさいバカキョン!あんたは全部知ってたんでしょっ! 知ってるくせに何で私に何も言わなかったのよ! あんたの責任が一番重いんだからね! 一番下っ端のくせに!一番あたしと一緒にいたくせに! あんたがもっと早く話してくれたらこんな事にはならなかったのに! 有希も古泉くんもみくるちゃんも、こんな目に会わずに済んだかもしれないのに!」 いやハルヒ これにはいろいろと事情があってだな 「黙りなさいっ!!!」 ハルヒは再び俺をグーで殴った そしてハルヒはくるっと体を反転させて佐々木に指を突きつけた 「神さまになりたいのなら好きにすればいいわ 世界を作り変えたいのならいつでもどうぞ ただし、1つだけ言っておくわ あたしの大事なSOS団員に指一本でも触れたら、今度はただじゃおかないからね! あんたがどこの世界のどんな神さまだろうと、あたしが必ず探し出してこの世から消し去ってやる!」 佐々木はしばらく呆然とハルヒを見ていたが やがてクスクス笑いだした 「さすがは涼宮さんね やっぱり私はかなわないわ ちょっとだけだけど神さまなんて言われていい気になってたのかもしれないわね ごめんね涼宮さん あなたの大事な仲間をこんな所にまで連れて来てしまってごめんなさい でも1つだけ分かってほしいの あの子は全然悪くないから あの子のために、この世界を作り直すエネルギーを分けてほしいって頼まれて それで周防さんにも協力してもらって今回の作戦になったの 責任は全て私にあります。憎むなら私を憎んで下さい だけどこの子は別だから。一人ぼっちでここで生きていくのがかわいそうだと思ったから だからこの子だけは許してあげて」 ハルヒは無邪気に笑う新入生をじっと見た 「あなた、名前は?」 「名前はまだありません」 「もう北高はやめちゃうの?」 「えっと、まだ決めてません」 「そう、じゃあいいわ。でもこれはもうしばらく預かっとくから、後で学校に取りに来なさい」 「はい!」 ハルヒはそれ以上何も言わずに戻ってきた 呆然とする古泉と、泣きじゃくる朝比奈さん、そして無表情のままで涙をこぼす長門を俺の前まで引っ張ってきた 「さあキョン、帰るわよ」 ああ これだけ暴れりゃ充分だろ 暴れ足りないのはハルヒだけじゃないのか? 「・・・キョン」 え? 「マジで殺されたいの?」 ・・・・・・ 「帰るわよ」 俺たちは輪になって手をつないだ 「みんな、目を閉じて元の世界を念じるのよ 有希のマンションのあの部屋をね」 「・・・・・・それでは不足・・・・・・終わらせない・・・・・・」 後ろから小さな声が響き、長い髪の毛を狼のように空気で膨らませた周防九曜が襲いかかってきた ハルヒの持っているオーパーツを目がけてギラギラした光の束が襲いかかる すぐに反応したのは長門だった 高速呪文を唱える余裕はなく、長門は瞬間移動でハルヒの前に立った 「有希!」 長門は小さな体を太い光に貫かれ、その目を大きく見開いている 「有希!」 「長門さん!」 長門! 「・・・・・・いい・・・・・・肉体の損傷は無視できるレベル」 周防九曜はその長い髪が大きく膨れ上がり 小柄な体を5倍ほどの大きさに見せていた 「・・・・・・ここで終わる事はできない・・・・・・あなたは美しくない・・・・・・」 長門が素早く詠唱し、俺たちを包むように、白い光の壁が発生した 「早く戻った方がいい」 「・・・・・・あなたは美しくない・・・・・・この場所にはふさわしくない」 周防九曜の体もオレンジ色の光に包まれ、ゆっくりと空中に浮かびあがった すかさず長門が追従し、同じように空中に浮かんだ 「有希!もうやめなさい!もういいのよ!」 「このインターフェイスを残しておくのは危険。私が始末する」 おい長門、もうやめよう。こんなの放っといてみんなで帰ろうぜ 「それはできない。このインターフェイスは暴走を始めている」 暴走? 「そう」 「・・・・・・私は今日、習いました。言葉の意味を・・・・・・これはお花です。とても美しい・・・・・・あなたが好きです・・・・・・お前は死ね」 長門、こんなの相手にして大丈夫なのか? 「勝算はある。早く退避を」 おい佐々木、ここは危険だ。お前も全員連れて帰れ ハルヒ、俺たちも帰ろう 「でも有希が・・・」 長門が勝算があるって言うんだから信じようぜ 「有希・・・」 「・・・・・・私は、歩きます。遠くのお空に。明日は、お肉を、食べました」 見守っているうちに周防九曜の様子が明らかにおかしくなっていた 第1形態が指からの光線の矢、第2形態は髪の毛の槍 とするとこれが第3形態なのか、オレンジ色の球体に包まれたその体から次々と光の束が長門に向かってほとばしった 長門は素早く詠唱しながらその光を直前で跳ね返し、返す刀でオレンジ色の光に切り込んでいった 「キョン、私たちはこれで戻る事にするよ」 ああ佐々木、ここは危険だ 「君たちも無事帰ってきてくれよ」 もちろんだとも。気をつけてな 佐々木と橘京子、そして藤原の姿が消えた おいハルヒ、俺たちも帰ろう 「でも・・・有希が・・・」 帰ろうとしないハルヒの気持ちは俺にもよく分かる ようやくハルヒにも今までの俺たちの行動が読めてきたのだろう 自分の知らない場所で行われてきた壮絶な出来事に目を丸くし、また長門を1人残しておけないという気持ちは俺たちももちろん一緒だ 上空で繰り広げられるすさまじい戦闘に、俺たちは目を奪われていた 周防九曜は次々と攻撃を繰り出し、長門はそれを防ぎながら何やら光を出して攻撃もしていた 下から見ている俺たちには戦況はさっぱり理解できない やがて飛び道具では埒が明かないと見たのか周防九曜は距離を詰め、再び黒髪の長い槍を四方八方から突き立ててきた 何本かずつまとめて払い落していた長門だったが、そのうち数本が無残に体を貫いた 「有希!」 「私は大丈夫。それより早く帰還すべき」 「あんたを置いて帰れるわけないでしょう!」 「置いて行っていい。必ず戻る」 「本当?」 「本当」 「絶対に帰って来なさいよ!有希!」 「約束する」 まだ名残惜しそうなハルヒをせきたて、俺たちは再び手をつないだ するとまだあの新入生が残っているのに気がついた。おい、お前はこっちに来なくていいのか? 「ここが私の世界ですから」 こっちは今から危険な状態になるかもしれないんだぞ 「構いません。その時はそちらの世界に行きます」 絶対生きろよ、こっちでもあっちでもいいから 「はい!ありがとうございます先輩」 「さあみんな祈って!向こうに帰れますように。・・・・・・有希が無事に帰って来れますように」 足元が激しく揺れ、時間移動とも次元震ともまた違う感覚の後で、俺たちは再び固い地面に立った 「ほわーっ」 朝比奈さんの溜息とともに、ようやく地球に帰ってきた事を実感した 出発点と同じ、長門のマンションだった。そこにはまだ佐々木たちがいた 「無事帰ってきたね」 ああ 「どんな様子だったの?」 まだ長門と周防が戦ってるよ どうやら異常動作を起こしたらしい 「本当に申し訳ない。我々の仲間なのに何もできなくて」 まあしょうがないだろ。何しろまともに会話もできないヤツだったからな 「古泉くん」 「はい?」 「みんなを連れて帰って」 「えっ?」 「みんなを家まで送ってあげて」 「しかし長門さんがまだ・・・」 「いいから!」 「はい、では後はよろしくお願いします」 古泉はまだ泣きじゃくっている朝比奈さんを抱き起こし、佐々木たちも連れてマンションを出ようとした 「ふん、結局規定事項の確認のみか、骨折り損とはまさにこの事だな」 藤原がつぶやいて立ち上がった 「俺はここで失礼するぜ。どうやらこれ以上の展開はなさそうだしな。ところであんた」 こいつは俺の朝比奈さんをあんた扱いするのか?許さん 朝比奈さんがビクッと体を震わせた 「は、はいっ?」 「つまらない任務だったけど、あんたと戦えてよかったよ」 「ふぇっ?」 「まさか7億年前に連れていかれるとは思わなかった」 「あっ、あっ、あれはその涼宮さんの・・・」 「途中で時間の流れについていけなくなった。気絶するとは時間移動員失格だな おかげさまですごいものを見せてもらった。さすがは歴史にその名を残している人物だけの事はある これは禁則だけどな」 「えっ?えっ?」 「あんたに出会えてよかったよ、朝比奈みくるさん。今度会う時は・・・その・・・禁則だ」 「へ?」 「ありがとう、大先輩」 藤原は意味不明な禁則事項を連発しながら朝比奈さんと握手を交わし、佐々木に軽く頭を下げ、俺たちを一瞥してその場から消えた 「何なのよあいつはいったい」 「わわわわたし・・・・・・」 どうやら藤原ってのは朝比奈さんよりもまだ未来の人間なのか しかしちょっと聞こえたけど、朝比奈さんが歴史に名前を残すとか 「じゃあ、あとで必ず連絡を下さい。何時になっても待ってますから」 古泉はそう言って残りの全員をまとめ、マンションを出ていった 俺は別に帰れとも言われなかったのでそのまま残っていたが、誰もいなくなるとハルヒが口を開いた 「さあキョン、もう一度行くわよ!有希を助けに」 へっ そう言うと思ってたよ団長さま どこまででもついていってやるぜハルヒ 地獄の底まででもな 俺とハルヒは手をつないで、再び長門の部屋の額の前に立った 「行くわよキョン」 ああもちろんだとも 呼吸を合わせ、まさに飛び込もうとする寸前に 「・・・・・・行かなくていい」 背後から小さな声がかかった 「有希!」 長門!帰って来れたのか? 「帰ってきた」 長門は布団をすっぽり首までかぶっていた 黒い瞳は大きく見開かれたままだ 「有希!よかった!帰ってきてくれて」 「帰って来ると約束した」 長門・・・ 無事だったか 周防はどうなったんだ? 「・・・・・・周防九曜は消滅した。暴走を止めることはできなかった」 あの新入生は? 「まだあそこにいる。でもまたこの世界に来たいと言っていた」 「本当に?有希?」 「そう。そのオーパーツを取り戻しに来る」 「これ?」 「そう。それは彼女にとってとても大事なもの」 「ふうん・・・・・・」 なあ長門 「何?」 ちょっと布団めくってもいいか? 「ちょっとキョン!こんな時に何エロ目線になってんのよっ!」 違うぞハルヒ ちょっと心配だったから 長門が傷ついてるんじゃないかと思ってな 「・・・・・・見ない方がいい」 ん? どうしてだ長門? 「通常の神経構造を持っている人間にはこの状態はかなりショックを受けるはず。だから見ない方がいい」 「有希!あなた怪我したの?どうなの?」 「肉体の損傷はすぐに再生できる。でも少し時間がかかる」 「有希・・・・・・」 ハルヒは構わずに布団をめくり上げようとする 俺は・・・すまん長門・・・ ちょっと耐えられそうになくて、思わず目を背けてしまう 「万が一にもこれを映像化しようなどという野望があるならここは自粛すべき」 長門は内側から布団を押さえ、ハルヒに抵抗していた 「医療技術者でもこの状態は正視に耐えないレベル・・・見ないで」 「有希、本当に大丈夫なの?」 「大丈夫」 おいハルヒ、長門が嫌がってるんだ、もうやめておけ 「分かったわよ・・・」 「頼みがある」 「何?有希」 「・・・・・・もう帰ってほしい」 「ん?」 「・・・・・・肉体の回復がうまく進行しない。エラーが発生している」 何か問題があるのか長門? 「情報処理にエラーが頻発している・・・・・・原因は・・・・・・禁則」 長門? それまでまっすぐ上を見つめたままの長門が首だけを横に曲げた その寸前に、大粒の涙が頬を流れ落ちるのが見えた 「・・・・・・お願い・・・・・・帰って・・・」 長門・・・・・・ ごめんな お前の気持ちに・・・・・・俺は応えてやれなかった それが・・・お前の禁則なのか? 俺の目の奥が、なぜかじんわりと熱くなってきた 長門の禁則の理由が何となく理解できる すまん長門 それでもまだ長門の布団を引っぺがそうとしているハルヒを引きずるようにして、俺は長門の寝室を出た 「有希!来週には絶対学校に来るのよ!」 「・・・・・・それは約束できる」 「じゃあね!絶対よ!」 長門 「・・・・・・・」 また部室でな 「・・・・・・・ありがとう」 俺とハルヒは長門の部屋を後にし、黙ったままでエレベーターに乗った マンションの玄関を出ると、そこには佐々木が待っていた 「ごめんなさいね涼宮さん。いろいろ迷惑かけて」 「もういいってば」 「長門さんは帰ってきたの?」 「今帰って来たわよ」 「周防さんは?」 「・・・・・・戻らなかった」 「ふうん、やっぱりか。結局私は仲間を守れなかった あなたはちゃんと全員を無事に連れて帰ってきたのにね。やっぱり私はリーダー失格か」 「そんな事ないわよ、どうしようもない事もあるし」 ああそうだよ佐々木。周防は暴走していた ああするしか方法はなかったみたいだからな あの長門がそう言ってたんだから 「だけどキョン、僕がもっとうまくやれば、その暴走を食い止められたかもしれない」 それは結果論だろ 周防は帰って来れなかったけど、後は全員無事だったんだから もうそれでいいんじゃないか? あの新入生もまた帰って来るよ。オーパーツを受け取るためにな 「そうか・・・・・・君がそう言ってくれるのなら・・・納得するよ。ねえ涼宮さん?」 「ん?」 「周防さんはいなくなっちゃったし、藤原さんは元の世界に戻った だけど私と橘さんはまだこの街にいるわ もしかしたら、また私たちが出会う事もあるかもしれないんだけど、その時は・・・・・・」 「その時は?」 「友達として会ってくれるかな?」 ハルヒはまだ怒りを含んだ目で佐々木を見ていたが、しばらくしてその目が柔らかく光った 「もっちろんよっ!一緒に冒険した仲間なんだから! これからもまた、不思議探しの旅に出るのよ!」 おいハルヒ これだけものすごい体験をしておいてまだ足りないのかよ それに北口周辺なんかに不思議が落ちてるはずないって これだけやってもまだ学習してくれないのかお前という女は 「当たり前じゃないのバカキョン これからは不思議を発見するだけじゃなくて作りだすのよ 誰かが言ってたでしょう! 『待ってるだけでは冒険は訪れてくれない』ってね!」 ほう その誰かってのはもしかしたら頭に黄色いリボン巻いて 仲間を危険にさらすのが得意な北高の女子の事じゃないでしょうね? 「それは今までの話よ!これからはね、あたしがあんたたちを守ってあげるんだから!」 やれやれ このバカの脳下垂体を解剖して、一度長門に学術調査でもしてもらいたいもんだ 「佐々木さん!あんたたちもこれからは準団員として認定してあげるから、たまには不思議探索に加わる許可を与えるわ」 「本当に?ありがとう」 「その時は新人として十分にこき使ってあげるから覚悟しときなさいねっ!」 「はい!団長!」 何だこの2人はいったい 完全に意気投合してるじゃないか 史上最悪の神様のツートップだ 1958年ワールドカップのブラジル代表チームでも勝ち目はないだろう ハルヒと佐々木はしばらく盛り上がっていたが 「じゃあ帰るね涼宮さん」 「うん、またね」 「じゃあねキョン、涼宮さんをお願い」 これ以上何をお願いするんだよお前は?もう勘弁してくれ マンションの前で佐々木と別れ、俺はハルヒと手をつないだ 7階の窓から誰かが見下ろしている気配も感じたのだが、残念ながら俺にはどうする事もできない 銀河系中の長門マニアに殺意を持たれてしまったのか それとも喜んでもらえたのか やれやれだよ全く リンク名 その4に続く
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第2話 ~ヒーローと目撃~ はっ!!今の夢は…一体?……あれは…ハルヒか?どこかの学校の校庭にいたのは分かったが一体何処の…… 「あぁ~!!キョンくん何でもう起きてるの?」 「ん、ああ。ちょっとな。」 俺は今朝の夢のことが気になってずっとぼーっとして歩いていた。 何だったんだろうな?あの夢は。ハルヒが出てきたような気がするが… 教室に着くとドアを開けた途端太陽のような笑顔のハルヒが俺に突撃してきた。 「キョン!!今すぐ一緒に来なさい!さぁ行くわよ!!!」 「おぉわっ!!ちょっと待て、授業はどうすんだ。」 「そんなもんサボるに決まってるでしょ!」 そう言ってハルヒはいつかのように俺のネクタイを引っ張って無理矢理俺を部室まで引っ張っていった。 ドカン 「ヤッホー!キョン一丁お待ちぃ。」 お待ちって誰が待ってるってんだ…って何でお前ら… そこにはSOS団全員+鶴屋さんが揃っていた。 「それでは皆さん!これよりSOS団七夕緊急ミーティングを開始します!!」 「おいおいそんなもん放課後にやればいいだろ、 何で今授業をサボってまでやる必要があるんだ?」 「必要な事なの!!大体、あんたはどうせ授業何ていつも寝てるんだから関係無いでしょ。」 ま、まあ確かに殆どの授業で寝てるのは確かだが… 「それでは今日の議題は、七夕についてです。」 「で、七夕がどうしたんだ。」 「はいそれじゃあキョン、七夕と言ったら何?」 そりゃあ天の川とか、短冊とかだろ。 「確かにその通りね。じゃあその短冊を掛ける物は?」 そんなん笹に決まってるだろうが。 「そうよ!短冊は笹に付けるものよ。それは万国共通の事だわ。 そんでもって幾ら織り姫と彦星でも全ての人の願いを叶えてあげる事は不可能だわ。」 だからそれが一体どうしたって言うんだ。 「そこで笹よ!!やっぱり彦星もどうせなら 良い笹に掛かってるお願いの方が叶えてあげたくなるもんじゃない? いえ、そうに決まってるわ。」 ……相変わらずこいつの理論は訳が解らん。朝比奈さん、そんな貴重な事を聞いたみたいな顔する必要無いんですよ。 全部デマなんですから。それとも未来には七夕が無いのか? 「と、言う訳で、今日はSOS団プレゼン!!笹取り大会を開催します!!」 あー何だ、ツッコミたいとこは色々あるが 「おいハル「意見のある人は挙手をして発言しなさい!!」 ったく、コイツはそんなに俺にしゃべらさせたくないのか? 「は~い。」 「はい!鶴屋さん!!」 俺が挙げる前に鶴屋さんが挙げてしまった。 「笹取り大会って具体的に何をするんだい?」 確かにそれは気になるな 「そうね…じゃあ2人1組に分けて、それぞれ笹をとって来て一番良い笹をとって来たペアの勝ちってのはどう!」 じゃあって、今考えたのかよ! 「ちなみにペアはくじ引きで決めるわよ。それじゃあ有希から順番に行くわよ!はいっ…」 今回はいつもの爪楊枝に3色の印を付けていた。 しっかしハルヒもまた面倒なことを思い付いたもんだ。 まあしかし、今日の俺は余程ついているらしい。 「…青……」「緑だ。」「青ですね。」「赤にょろっ!!」「ぁ、緑です。」「赤だわ!!。」 今の会話で分かってもらえたかどうかいささか不安だが、 そう俺はなんと俺の天使様、つまり朝比奈さんとペアになったのである。 当の朝比奈さんはと言うと、自分の楊枝の先を少し赤くなりながら見ていたが、 暫くして俺の方を見て、はにかみながら会釈をしてくださった。いや~、心がどんな宝石よりも綺麗になる気がするね。 …ん?いつもだったらここで我がまま団長様がアヒル口で文句の1つや2つ言ってくるのに、何も言ってこないなんて珍しいな。 「それじゃあ皆!時間が無いから早く行くわよ。」 「行くって何処に行くんだ?」 「鶴屋山よ。」 何でも「この前ハルにゃん達が宝探しした山にさ、竹の密生地帯があるからそこを使うにょろ!」だそうだ。 んでもって俺達は今バスに乗っている。俺は朝比奈さんと鶴屋さんと一緒に座ってるハルヒから距離を取り、 古泉と長門に昨日休んだ理由を聞いてみた。 「近頃情報統合思念体は涼宮ハルヒという個体を2体観測した。しかし、涼宮ハルヒの近辺での情報改変は観測されていない。その真相を調査するため休んだ。」 何だと!?ハルヒが2人ってどういう事だ? 「詳しくは解っていない、涼宮ハルヒの能力が人格化し、涼宮ハルヒ本人から離別し行動している。」 え~とつまり、ハルヒの能力に人格が出来てそれはハルヒ本人とは別の意思を持っているって言うことか? 「その通りです。そしてその別の人格が涼宮さん本人とは別の肉体をもち、別の行動をしているようです。」 なる程、じゃあ元のハルヒは能力を失ってるのか? 「はい。しかし今そこにいらっしゃる涼宮さんが能力を持っていない訳ではありません。 なぜなら、彼女、つまり能力を持った涼宮さん、ここでは、そうですね…涼宮さん(能)とでも呼びましょうか。 彼女が現れるのは、涼宮さんが夜中に眠っている間だけだからです 。それ以外の時間は涼宮さん(普)の中で眠っているようです。」 何でそんな事になってんだ? 「それはまだわかっていません。しかし「3年前の七夕が関係している。」 今の今まで空気のように振る舞っていた長門が突然割り込んできた。 独りで歩いてて寂しくなったのか? 割り込まれた古泉はやれやれといったように肩をすくめてみせた。ちっ、様になってやがる 「彼女が出現したのは4年前の七夕のジョン・スミスが深く関わっていると思われる。気をつけて。」 「どう気を付けろというんだ。」 「それは………」 長門は急に俺から目を逸らし、明後日のほうを見ながら 「あなたに託す。」 はぁ、誤魔化したって無駄だぞ長門、要は分からないんだろ。 「やれやれ。」 しかしそんなごまかしたりする長門も珍しくて、なんだか可愛かった。 「さぁ、着いたにょろ!」 そして今俺達は鶴屋山の裏側の中腹くらいにいる。 「こっから山の麓近くまでずっと竹藪になってるっさ!!気にった竹を見つけたら好きに採ると良いよ!!」 採るったって、一体何で採るんです?まさか素手なんて事は…「あっ、そっかそっかぁちょろんと待っててね。」 そう言って鶴屋さんは、山の上の方に向かって歩きだした。ちょろんとっていうのはまた30分程なのだろうか? しかし俺の懸念も空振りに終わり鶴屋さんは2分程で戻って来た。のだが… 「皆さん、お久しぶりでございます。」 何故かその隣に新川さんが居た。何故だ?意味が分からん。 俺がよほど怪訝な顔をしていたのだろう、古泉が突然解説しだした。 「新川さんには良い笹の審査員をして貰います。僭越ながら僕が先ほど呼ばせていただきました。かまいませんか?涼宮さん。」 「ええ、構わないわよ。確かに審査員無しじゃ誰が一番か決められないわね」 じゃあお前はどうやって勝負を決めるつもりだったんだよ。 「ありがとうございます。それでは新川さん。」 「かしこまりました。」 そう言って新川さんは何処から出したのか、 ちょっと大きめの鉈を3つそれぞれ俺と古泉とハルヒに渡した。そして 「それで竹を切って下さい。」 といって、もう1つ鉈を取り出し、 「この様にしてください…」 と言った。そしてふーっと息を吐いたかと思うと、突然カッと目を見開いて 「SUNEEEEEEEEEEEEEEKU!!!!」 と叫びながら鉈を一振りした。 一瞬だった。そして気付くと、新品のトイレットペーパー並みの太さの竹が真っ二つになっていた。スネークって一体…? ハルヒは目を爛々と輝かせ 「スッゴいわねぇ!!どうやったらそんな事が出来んの?」 と嬉しそうに言っていた。 鶴屋さんは爆笑していたし、長門と古泉はいつも通りだった。しかし朝比奈さんはよほど新川さんの顔が恐かったのか、殆ど半泣き状態だった。因みに俺は声一つ出せなかった。 「じゃあみんな!!1時間後にまた此処に竹を持って集合ね。さあ、行きましょう鶴屋さん!!」 「ラジャーっさ!!」 そう言ってハルヒと鶴屋さんはものすごい速度で竹藪に消えてった。 「それでは長門さん、僕達も行きましょうか。」 「………」 長門は3ミクロン程頷いて古泉と歩いていった。 さて、俺達もそろそろいこうかね。 「さ、行きましょうか、朝比奈さん」 「…あ、はい。」 そうして俺達も竹探しに向かった。 しばらく歩いてからのことだった、突然朝比奈さんが俺の方に向き直り、潤んだ上目遣いで俺を見て 「キョ、キョンくん!あ…ぁあの、昨日はごめんなさい。せっかくキョンくんが遊びに来てくれたのに…本当にごめんね。」 と言いながら、頭を腰より下まで下げて謝った。 「そんな謝らなくて良いんですよ。俺は気にしてませんから。」 俺は出来るだけ朝比奈さんをなだめるようにいった。 「でもぉ、自分から呼んでおいて部屋に入れた途端に寝ちゃうなんて、わたし…最低です。」 そういえば朝比奈さん(小)は朝比奈さん(大)に眠らされた事は知らないんだもんな。 そりゃあ朝比奈さん(小)本人にしてみれば、突然寝ちまったようにしか思えないよな。 しかしまずいな、朝比奈さんはもう顔を上げては居るが、今にも泣きそうな顔をしている。 朝比奈さん(大)のことをいうわけにもいかないし……しょーがない。 「じゃあこうしましょう朝比奈さん。今度また改めて俺を家に招待して下さい。それでどうですか?」 「ぇ、で、でも…キョンくんはそんな事で良いの?」 「ええ勿論ですよ。その代わり、その日は朝からお邪魔させてもらいますよ。それでおあいこです。良いすよね?」 俺はこれ以上朝比奈さんに文句を言わせないように言った。 「あ、じゃあ…そんな事で良かったら、今度の日曜にでも、また遊びに来て下さい。」 勿論かまいませんよ。来週の日曜ですね。たとえハルヒの奴が何を言おうが、遊びに行きましょう。 「うふ、ありがとう。キョンくん」 朝比奈さんはもう涙目では無く、とてもこの世のものとは思えない天使のような笑顔で俺を見つめて言った。俺も朝比奈さんを見つめ返した。 ガサガサッ 「ひえっ!!」 突然俺達の横にある茂みから音がして朝比奈さんは俺に抱きついてきた。あ~、このまま天に召されても悔いはないね。 「にょろにょろーん!!」 茂みの中からは鶴屋さんが出てきた。あれ?ハルヒが居ないようだが… 「おーいキョンくん。みっくるぅ!!ハルにゃん見なかったかい?はぐれちゃったんだよ~。」 ハルヒですか?見てませんが… 勿論かまいませんよ。来週の日曜ですね。たとえハルヒの奴が何を言おうが、遊びに行きましょう。 「うふ、ありがとう。キョンくん」 朝比奈さんはもう涙目では無く、とてもこの世のものとは思えない天使のような笑顔で俺を見つめて言った。俺も朝比奈さんを見つめ返した。しかしそんな良い空気の時に…… ガサガサッ 「ひえっ!!」 突然俺達の横にある茂みから音がして朝比奈さんは俺に抱きついてきた。あ~、このまま天に召されても悔いはないね。 「にょろにょろーん!!」 茂みの中からは鶴屋さんが出てきた。あれ?ハルヒが居ないようだが… 「おーいキョンくん。みっくるぅ!!ハルにゃん見なかったかい?はぐれちゃったんだよ~。」 ハルヒですか?見てませんが… 「そおかぁい。そんじゃスモーk「持ってません。」 「にょろーん。まあそんな事より…お熱いねぇお二人さん。はっはっはぁぁ!!」 「ひょ!!だ、だ、だだめです。また同じ穴の二の舞ですぅ」 朝比奈さんはよくわからない事を言って俺からパッと離れ、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。あぁ俺の至福の時が… 鶴屋さんさんは気付いたら消えていた。 5分後朝比奈さんはまだそっぽを向いていた。これじゃ笹が取れないまま帰ってハルヒにどやされちまうな。 「朝比奈さん、そろそろ行きましょう。時間がきちゃいますよ。」 「うぅ。」 顔を真っ赤にして唸りながら振り返り俺の方へ寄ってきた。 その時 「朝比奈さん!危ない!!」 「ふぇ?」 朝比奈さんは小さな崖から足を滑らせバランスを崩していた。 俺はとっさに朝比奈さんを抱き止めたが、結局2人して落ちてしまった。 こうなったら朝比奈さんへのダメージを出来るだけ減らすしかない! そう思った俺は自分の体を下にして朝比奈さんを包み込むように抱き締めた。 「ひょえぇ~~~~~!!!!」 恐怖のあまり朝比奈さんはとんでもない音量の叫び声を上げていた。 崖は10メートル以上もあったが、幸い地面に落ちる直前に一度木に引っ掛かってクッションになったため、大した怪我はしなかった。 しかしこれは暫く動けそうに無さそうだ。 それに俺は今仰向けに倒れており、朝比奈さんは俺の上にうつ伏せに倒れていた。 そう、俺達は今抱き合っているような構図になっている。 いや~何で今日はこんなについているんだろうね? 「ふぁ!!ぁ、ぁ、ごめんなさい!!」 と朝比奈さんは言ってガバッと体を起こした。 あぁ朝比奈さんそれでも今度は馬乗り状態になって別の所がものすごく気持ち、いやっな、なんでも無い!!只の妄言だ。 「ああ、朝比奈さん、大丈夫ですか?怪我は有りませんか?」 俺は朝比奈さんに手を差し向けながら言った。 「ぁ、はい。勿論大丈夫です。」 それは良かった。怪我をしてまで守った甲斐が有ったというものだ。 それから朝比奈さんは俺の差し向けた手を両の手で包み込むようにして取って、 「キョンくんが…守ってくれましたから。……すっごくかっこ良かったですよ。ありがとう」 と言って朝比奈さんは真っ赤になった。きっと俺の顔も真っ赤だろう。 「キョンくんはわたしのヒーローですね。いっつもわたしを助けてくれて、励ましてくれるし。それに今だって、ね?」 朝比奈さんは既に赤くなっている顔を更に真っ赤にして、やっぱりまだぎこちないウィンクをした。 余りの可愛いさに俺は朝比奈さんをどおしようもないほど愛おしく思い、 思わず朝比奈さんの手を引き、また俺の胸の上に倒して、抱き締めてしまっていた。 いかんな。いつもは抑えられるのにな… 「ふ、ふぇ?キョンくん?」 「すいません朝比奈さん。暫くこのままで居させていて下さい。」 「ぁ……はい。」//// そして朝比奈さんは俺の胸に顔をうずめて気持ちよさそうな声をあげた。 俺はそんな朝比奈さんの頭を撫でながら抱き締めていた。 最高だ~。死ねる!!今ならラオウのポーズで死ねる。 しかしキョン達はこの時自分たちを見撃して去っていった存在に気付いていなかった。 そう、鶴屋さんとはぐれたハルヒの存在に。ハルヒが自分たちを見ていた事に。 ハルヒは鶴屋さんを探している時にキョン達が崖から落ちたのを見て、崖の下に大慌てで降りてきたのだが、キョンとみくるが抱き合って居るのを見て走って逃げていったのだ。 ハルヒは普段なら確実にキョンを怒るのに、気付いたら逃げ出していた自分に困惑していた。 「…キョンと……みくるちゃんが?……そんな…なんで?………嘘でしょ?」 誰も気付きはしなかったがハルヒは独り涙を流していた。 涼宮ハルヒの方舟 第2話 ~ヒーロー・目撃~ おわり 第3話へ
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(この話は長編・「Another Story」の設定を遵守しています) 秋…。盛大な十五夜の団子パーティから1ヶ月が経ち、 ようやく持って夏は列島から去っていったらしかった。 確かに熱くてかなわなかったが、この身体ごとどっかに持って行かれそうになる 冷たさを含んだ風はどうにも苦手だ。矛盾してるねぇ。 深い緑はすっかり赤、あるいは黄色に変わって、 この通学路も売れない画家の絵くらいには様になってるんじゃないかって風情がある。 今日も健気にその絵の中の通行人Aと化している俺だったが、 まぁ、なんだろうね。しばらくは何にもなかったし、まさにそれがゆえ、 そろそろ何かしら発生しなければおかしいのではと考えてしまうのは もはや職業病、いや、団員病か?そんなものがあればの話だが…。 教室では文化祭の話もちらほら出始めているが、 なんせやる気のないうちのクラスのこと、本格的に動き出すのはもうちょっと 先のことじゃないかね…などと思いつつ、俺は40過ぎの中堅サラリーマンよろしく よっこいしょといつもの席に腰を下ろす。 窓を開ければ涼しい風が吹いてくるので、もうノートを団扇代わりにする必要もない。 1週間後は中間テストだったが、一瞬思い当たった直後に俺はそのことについての思考を放棄した。 「ねぇねぇ、文化祭でうちのクラスは何をやるのかしら?」 後ろの女、涼宮ハルヒは、シャーペン攻撃と同時に俺の後頭部に言葉を投げた。 「さぁな、このクラスのことだ、出来上がるものもたかが知れてるんじゃないか」 まぁ、うちのクラスに限らず、しょぼい公立高校の文化祭の出しもののアベレージなど、 わざわざここで行数を裂いて語るまでもないね。 だが…このクラスがもし全く無気力なままに文化祭を向かえようとしたら、 それはそれで困った事態になるような予感もしているんだ。 きっと失望したハルヒは、次の瞬間「私たちで何か出し物をすればいいのよ!」とか 言い出すに決まって… 「SOS団でも何かやらない手はないわよね!」 俺がモノローグを終えるまでもなくハルヒは予測を見事に実行してくれた。 もしこの世にハルヒダービーなるものがあれば大賭けの大儲けできるだろうね。 そんなもんが存在した日にはこの世の終わりもいよいよ近いだろうが。 ってなわけで放課後だ。 俺は古泉とまわり将棋をしていた。 おおむね俺が勝っていて、これはまぁいつものことなので特筆すべき点もない。 朝比奈さんは最近紅茶に凝りだしたようで、かつて湯飲みを満たしていた 緑色の液体は、この山の木々と連動するかのように、今は朱色になっていた。 俺としては、今までどおり緑茶であった方がよかったのだが…。 長門は季節が秋になったことに伴って…なのかは分からないが、 読書の秋と脳内プログラムの一行目にコードが書いてあるかのごとく、 普段の倍近い量の(これは俺の感覚測でしかないが)ページを繰っていた。 で、団長様であるが、放課からかれこれ1時間ほど姿を見せない。 同じクラスではあるものの、一緒に部室に行く、なんて 鳥肌の立つ行動をすることは滅多になく、大抵はどちらかが掃除当番だったり、 何かしら思いつきの準備に奔走していたり…まぁそのどっちかの理由で、 俺とハルヒが同時にここの扉をくぐることは少ないのだった。うん。そうなんだよ。 ハルヒが扉を開ける時は、大抵威勢よくバーンと音響がするが、 驚くべき事にかちゃりとノブがひねられ、しずしずと歩を進めてきた。 いや、別に落ち込んだ様子があるわけではない…ように見える。 「さて、今日も部室の掃除をしなくちゃ」 第一声。誰の?分からないか?まぁ無理もないか…。 俺は驚きの連続で、それは他の団員も同じらしかった。 古泉は微笑顔がこころなしか強張っている気がしたし、 朝比奈さんはきょとんとして大きな愛らしい瞳をぱちくりしていたし、 長門ですら先ほどの倍速読書を通常ペースくらいには速度を落として、 目の端でどこかおかしいこの人物を見ているようだった。 さて、無意味に引っ張りすぎたね。そう、つまり、ハルヒが入ってきて早々に 箒片手に掃除を始めやがった。部室の。なぜだ?今まで一度でもそんなことがあったか? 「ふんふんふーん、ふふふふふん♪」 にこやかに笑いながらハミング…しているこいつの行為は、 普段なら朝比奈さんの通常業務で、それはすなわちハルヒは決して自分ではやらないことであり、 簡単に言ってしまえば雑用だった。時によっては俺の役目でもある。 「ハルヒ…?」 俺は上ずった声を抑えられず言った。まぁしょうがないと思う。 「なぁにキョン?私はいま掃除中なの。用件ならあとにしてくれるかしら」 言うなりそのままさっさかとチリトリからゴミ箱へ埃やら何やらを移し、 今度ははたきを持ち出して部室内の壁をぽこぽこやり始めた。 …何だ?急に潔癖症にでもなったのか?ハルヒが掃除?天変地異か? などと考えるのはさすがにオーバーかもしれないが、それは俺が今まで体験してきた 事柄をふまえての事であって、そういう時は大体こうやって日常に対するささくれのような 出来事が、不意に俺たちの前に去来してくるのであった。 これもそうなのか? 「おっはなに水をーあっげまっしょう~」 掃除が終わると今度は花の水を変えるべく花瓶を持って部室から出て行きやがった。 これはどうなっているのか。俺はすぐさま向かいの人物に対しこう言った。 「今度は何だ?」 「僕が訊きたいくらいですよ」 古泉は未だ強張った微笑フェイスのまま言った。こいつなりに気持ち悪さを感じたのだろうか。 他の2人を見ると、朝比奈さんはふるふると首を振り、長門は最早 倍速読書に戻っていて、長門的には大したことではないらしかったが、 いや真っ当な感性を持つことを自負している俺としてはどうにもむず痒いぞこれは。 またどこかしおらしくハルヒは戻ってきて、花瓶を長門のテーブル脇にそっと置くと、 上機嫌のまま団長机に腰掛けた。のだが…。 「みくるちゃん、お茶くださる?」 この言葉に朝比奈さんは数秒反応できず、なぜって、ハルヒは何かシニカルな調子で こういう口調をとることはあっても、決してどこかの有名私立校のお嬢様よろしく微笑みかけて 湯飲みをさし出したりはしないだろうから…だ。 明らかにおかしい。どこかバグッたかショートしたか、何かの設定がいじられたか… とにかくそのようなことがあったとしか思えない。 さらに極めつけは、 「ねぇキョン、今度の休日に一緒に買い物に行きません?」 などと俺の皮膚が分離して脱皮できてしまいそうなことを言い出した。 「…お前、風邪か?」 口をついて出たのはそれだった。うん、きっとそうだ。 こいつは普段風邪なんてものとは無縁の生活を、そうだな、何年も送っていただろうから、 そのツケが今このときに回ってきて、それには季節はずれの花粉症やら何やらも混入されていて、 えーとつまり… 「熱があるんじゃないか?」 俺はハルヒの額に手をあて、残った方の手で自分の額を押さえた。 平熱。俺自身がインフルエンザにでもかかっていない限りこいつはいたって普通である。 俺は今自分なりに普通モードの思考形態を維持しているはずだから、やはりこいつは健康体のはずだ。 「何するんですか?私は何ともありません!離してください!」 ハルヒは少し腹を立てたようだったが、それがまた奇妙だった。 行動で表すのははばかられるから、大人しく首だけ横向けてつんとしているような…。 なんだか元のハルヒがどんなであったか一瞬忘れそうになったが、 部活を作ると言い出したときのあの表情を思い出して俺は何とか自分をつなぎ止めた。 「それで、買い物には付き合ってくれるんですか?」 …えーと、俺は何て言ったんだっけ? 例えばこれが小説だったとして、いきなりこのように人物設定が変えられてしまったら、君は想像がつくだろうか。 いや、俺は当事者である以上想像どころか現状を鵜呑みにしなきゃならんわけだが…。 そんなわけで俺はなぜいつもの待ち合わせ場所に一人でいるんだろうね。 15分前。待ち合わせ場所に着く時には俺はいつだって最後で、 それは誰かの謀略でしかなく、それがハルヒによるものであれば俺は両手を上向けて いつもの言葉を言うしかないのだが、今日のこのシチュエーションは一体どういうことであろうか。 のっけからぶったまげる事うけあいなセリフをハルヒは言った。 「遅れてごめんなさい!待ちましたか?」 小首を傾げてこっちを上目遣いでうかがっていやがる! 「ちょっと待ってくれ」 俺は近くの公衆トイレに向かい、自分が見たこともないような複雑な表情、 というより、取るべき表情を選びすぎた結果全部足して平均を取ったような、 何だか分けのわからん表情をしているのをみて、顔を洗って頬をぴしゃりと叩いた。 さし当たっての処置として、俺はこいつ、隣りで端整な表情を前に向けている女を別人として扱う事にした。 そうだ、俺はふとした事で知り合った女性と今日この日だけ買い物に付き合って、 その後は笑ってバイバイ、あぁ楽しかったねと無事ウィークデーに復帰するわけである。 学校でならまだ他の団員がいるわけだし、こんな切り替えをせずとも何とかなる…というかなってくれ。 「前から買いたかった服があって…貯金してたんです」 とこのどこかの国の住人さんは言った。 ん?いや、どこかの町に住む少女は言ったんだよ。うん。 買い物場所は待ち合わせの駅に唯一あるデパートの女性服売り場だったが、 こいつのチョイスを見た俺は思わずギクリとしてあたりをキョロキョロしてしまった。 今のうちに言っておこう。今日の俺は自意識などとうにわやになっていた。と。 これは明らかに朝比奈さんの守備範囲だろう。 お嬢様風というか、どこかのパレスガーデンを歩いてそうというか、 日傘もオプションでつけたら素敵ですね…みたいな。まぁ…そんなの…だ。 眩暈がした。何にかは俺には分からないぜ。 今日一日こいつはこの格好で街を歩くつもりなのか…。 「楽しいですね、ふふ」 悪い予感ばっかり当たるのは何故だろう。分かった人はここに特電をかけてくれ。 ちなみにイタズラ電話やら出前と間違えてかけたなんてのは勘弁だぜ。 これは第三者から見たら、というか、俺から見たって何の変哲もないデートであった。 ちょっと待て、これはないだろう、以前の問題だ。 どこぞの三流作家でもこんなベタな展開には飽き飽きだろうが。 「お前、正気なのか?」 「何がですか?」 「っていうか何で俺だけ呼ぶんだよ」 「だって、いつも5人だったでしょう?たまにはいいかなと思って…」 そんな可憐になるな。うつむいてしゅんとするな。映像担当の人が困るだろ。 いやそんなことはどうでもいいんだ。 「お前昨日の記憶あるか?」 「昨日?」 時間は昼になっていて場所はレストランになっていた。 今のところお馴染みの喫茶店の出番はないらしく、マスターの顔を拝むのはしばらくおあずけかもしれん。 「そう。特に昼以降のだ。」 こいつが普通だったのは昨日の授業中までだと思うが、 昼休み以降は会話した覚えもなかったので、そこから先は普通だったか疑問である。 「そうですね…昨日は、お花に水をあげて、掃除をして…」 言葉だけ切り取ればそのまんま朝比奈さんな文面だったが、声の主は間違いなくハルヒで、 見ていると混乱した挙げ句思考に支障をきたしそうだったので俺は片手をテーブルにおいて 頭を抱えるように視界をさえぎった。 「その前は…図書室に行っていました」 あの1時間か。それで?何でまた図書室なんかに行ったんだ?らしくないな。 「えぇっと…ファンタジーの資料というか、物語を集めに…」 まさか文化祭の出し物の準備じゃないだろうな…。 「そうですよ?クラスでやるものを提案しようと思って」 どうやらキャラクターまで変わってしまったらしい。 きっと今のこいつなら道端に落ちてる1円玉ですら拾って交番に届けるだろうし、 もちろん老人や妊婦がいたら席を譲り、もしかしたらタバコの吸い殻とか空き缶ですらちゃんと クズカゴにいれるかもしれない…。 「その時に、何かおかしな物はなかったか?」 「おかしな物?」 だからきょとんとするな。そしてそれを見るな俺よ。 これはよくあるヒーロー物の悪の組織が俺をたぶらかすために仕組んだ演技だと思え! 内なる波をなんとかいなしながら俺は質問を続ける。 「そうだ。例えば本のひとつから妙な感じがした、とか、 司書のおばちゃんの視線が何か不自然だった、とか」 「そんなことないですよ?本は綺麗でしたし、おばさんはいい人でした」 …見当がつかん。所詮俺ひとりで解決するのは無理なのか。 その後の俺は混乱するだけで一日を終え、帰ってきて 今までのSOS団市内探索のどの回より疲労していた。あいつは誰だ。 ベッドに突っ伏してそれらしく唸っていると、かちゃりと扉が開いて妹が顔を出した。 「お兄ちゃーん、ノリ持ってなーい?」 俺はそのまま机の方を指差して、後は何も言わなかった。 …えーっと、涼宮ハルヒはSOS団団長でフランクかつハイテンションのヒステリック…。 などと特徴を脳内で箇条書きにしているうちに俺は眠ってしまった。 何となく、俺はこの問題に関しては誰の助けも借りたくなかった。 どうも問題はハルヒの性格ダイアルが反対方向に回ってしまったことのみらしく、 それで他に問題が起きるとも思えず、むしろ迷惑自体は地球全体で見れば減っているはずだ。 だが戻さないわけにはもちろんいかない。ハルヒがこのままだったら俺は一週間もしない内に発狂する。 二時限目だった。数学の吉崎がねちっこく新しい公式を説明していた。なんのこっちゃ。 「やれやれ」 我ながら今日のこのセリフには覇気がなかった。いや覇気というのか分からんけどもだ。 転機となったのは昼休みの国木田のこのセリフだった。 「昨日の涼宮さん、何か変じゃなかった?」 いや今日も順調に変だぞ。大好評継続中だ。なんて授業中じゃ分からんか。 というか変なのは年中そうなのであって、今回は変なのが普通になったから変なわけで…。 「そういや今日も何となく大人しいな」 谷口が唐揚げを口に含みながら言った。 「うん、何か昨日の昼休みの初め、ぼーっと空を見上げてたんだ」 国木田が答えた。別に窓の外を見てるのは珍しいことじゃない。 「でもね、何だかそこに何か見えてるような視線だったなぁ」 「涼宮が普通の人間には見えないものを見てるのはいつもの事だろ」 谷口が言い飽きたと言わんばかりに返す。 「どのへんを見ていたか分かるか?大体でいいんだが」 俺は国木田に訊いて、国木田は窓から右、校庭の先には街並みが広がっているだけの方向を指差した。 すぐさま窓に近付いてそっちの方を見てみたが、もちろん何もない。 「そりゃそーだろ。キョン、お前は普通の人間なんじゃないのか?」 もちろんさ、谷口のこの言葉に含みなんかなく、文字通りの意味だろうが、 俺はいつだって面接で言ったら即不採用になりそうな妙な経歴はない。 さて、俺は部室で悶々としていた。 ここで何も思い浮かばないようなら通例に則って古泉、または長門あたりに助けてもらうことになりそうだが。 「お困りでしたら、相談相手になりますよ」 という古泉の申し出を俺は「まだいい」と言って断った。 長門はその時だけこちらを見ていたが、それを聞くとすぐに倍速読書に戻った。 せめてあと1日粘ってみよう。自分でも何故こんなに頑固になっているのかは分からない。 そういう時だってあるもんだ。思春期のせいにでもしとけ。 ハルヒは今日も掃除と水替え、さらには朝比奈さんの仕事を奪ってお茶汲みまでおっぱじめた。 「あの…それは私が…」との朝比奈メイドの言葉に、ハルヒは 「いいんです。いつもやってもらっていますから、たまには私が」と、 歯が20本総出で緩んで外れてしまいそうなことを言い、ついでに 「キョン、今日も付き合ってほしいところがあるの」 と言って俺を完全にノックアウトした。 俺だってもううんざりな心持ちさ。 いっそ俺も呆我してしまえればよかったが…まだくたばるには早い。 ハルヒが俺を誘ったのは、自宅からさほど遠くない小さな公園だった。 「私ね、たまに不安になるのよ」 「何が?」 半ば投げやりに俺は言った。例によってハルヒの方は見ない。 「SOS団の皆は私のことをどう思ってるのか」 これには虚を衝かれた。突然そこに戻るんだな。 「だって、私が作った団体だもの…。毎日が楽しくなればいいと思って」 今のこいつの脳内でどういう経緯と設定があったのかは知らないが、 少なくともどうやってかハルヒが団員を集めた事には変わりないらしい。 「だから古泉君や有希、みくるちゃんが退屈してないか、たまに不安になる」 退屈とはむしろ逆の方へ向かう事しばしなのでそのへん心配はないが、 これは果たしてこのハルヒ限定のことだろうかと、ふと俺は思った。 「ある日突然、皆がいなくなってしまうんじゃないかって、時々思う」 気付けばハルヒの方を向いてしまっていた。が、別人だと思う必要はないように感じられた。 あの七夕の日の、どこか物憂げなハルヒがそこにいて、一時的に人格が変わっていようが、 そういったごく稀に見せる部分は共通項としてこいつの中に存在しているらしかった。 「だから、そんな時にふっと窓の外を見たりして…」 ハルヒはくすっと笑って、どうやら別人格モードに入りそうだったので俺は再び前を向いた。 「あ。あのな、ハルヒ」 「なに?」 視線を感じたがそれには応じない。 「そんな心配は全くの思い過ごしなんだ。俺は、いや、お前以外のSOS団団員は、 この団に入ってよかったと思ってるし、そうでなかったらきっとこの日常はありふれた つまらないものになっていたとも思ってるぜ」 「…。」 ハルヒはまだこっちを見ているようだった。何かを言いそうにはないので、俺は続ける。 「だからな、そんな事は取るに足らない。お前はこれからも団長でいればいいし、 思いついたことをどんどんやってくれれば、それで俺たちは楽しいんだよ」 このハルヒが実行する思いつきは果たしてどんな物になるのだろうと思いつつ、 しかしそれに対し自分で答える間を与えず、ハルヒは言った。 「そっかぁ…。そうだよね」 「あぁ、気にしなくていい、お前が憂鬱だと皆が元気じゃなくなるぜ」 「ありがとう、キョン」 ハルヒはぼーっと空を見上げた。もう夜だった。 曇りらしかったが、切れ間に星が見え、輝きを返す。 ―その時だった。 ハルヒが急に動かなくなり、一瞬目に暗闇が落ちた…と思いきや、また輝いて、気を失った。 「ハルヒ!」 俺は頬を叩いた。いきなりどうしたんだ?? 「ハルヒ!しっかりしろ!」 「…」 「ハルヒ?」 「…ん?」 「大丈夫か?」 「…キョン」 「あぁ、俺だ。大丈夫か?お前…」 「何やってんのよ」 「何ってお前…」 バシッ! ある種王道、と呼べなくもない展開である。 なぜなら、俺はハルヒが倒れた拍子にこいつを抱き起こしており、 それで何故叩かれたかというと、もちろんさっきまでのこいつならそんなことはしないはずで、 つまり端的に言ってしまえば…戻ったのだ。こいつは。 何でだろう? 「あんた、あたしになにしてたのよ!」 「何って、何もしてない」 俺は断固として言った。ハルヒに何かしてひっぱたかれるくらいなら、 いっそ朝比奈さんを抱きしめてアイラブユーとでも言った後にこいつに 絞首刑にされるほうを俺は選ぶね。 「そもそも、あたし何でこんなところにあんたと二人でいるのよ!」 お前が誘ったんだ、と言うと今度は平手がグーに変わりそうだったので、 「お前が俺の家で文化祭の計画を練るって言った帰りに、お前は失神した」 と言ったが、こいつは簡単には信じず、 「あたしが失神?何でよ、そんな経験今まで一回もないわよ」 だが起きてしまったんだ。と結果論でまとめようとした俺に、 「じゃぁすぐさまあんたん家で文化祭の企画を考えるわよ! っていうか何であんただけなわけ?今からでもみくるちゃんと古泉君と 有希を呼びなさい!」 まず命令すんのかよとわざわざ言ったりせず、 俺は携帯を取り出してプッシュを開始する。 そうして見事に、文化祭企画会議第一回が開催されることに…なってしまった。 「涼宮ハルヒはこの星系から7つ離れた空間に位置する意識体の発信した念波を受け取った」 …長門の説明である。 普通の人間であればもちろん受信できないし、現時点で地上のいかなる技術力をもってしても、 それを確認できる距離にはないそうだ…。 相変わらずデタラメだな。俺が傍観者なら笑い飛ばしているところだ。 だが長門はいつだって真実しか言わないのである。 少なくとも長門が嘘を言った事はこれまでにない、はずである。 その念波によってハルヒはあの性格になっちまい、 さっきの星の方角にあった逆の波動によって元に戻った、と、 何とも後付け設定的匂いのプンプンする解説だぜ。 これが古泉のものだったら俺は脳に止める事を拒否していたかもしれん。 ちなみに波動はピンポイントなもので、今後地球に命中する確率は天文学的数値らしい。 ふと俺はさっきまでのハルヒを思い出し、外に鳥肌、内に吐き気を感じ、 すぐさま休日の出来事も一緒にフォルダごとごみ箱に捨ててしまった。 ハルヒは5人で入るには狭すぎる俺の部屋で、ベッドの上で仁王立ちして計画をぶち上げた。 …それはまぁ置いておくとして、こんな事件はいい加減マンネリではないのかね? などと考えつつSOS団員達を睥睨して、溜息。 それでも感情は裏腹だな、と気付いてしまった事は、俺の胸の家だけに秘めておこう。 ごみ箱に入れただけで完全に消去してはいない、あのハルヒの記憶と一緒に。 終了
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「ねぇ、キョン。駆け落ちしよっか?」 朝っぱらから物思いに耽っていると思ったら・・・何を言い出すんだ、コイツは。 ”駆け落ち”なんていう言葉は、お互いを愛し合っているが結ばれない運命にある二人がその運命を打ち破るためにだな。 「あたしとさ、樹海に行かない?」 しかも、死ぬこと前提でかよ。 頬杖つきながら、ぼーっとした顔で空を眺めんでくれ。 俺はいつも馬鹿みたいにテンション高いお前しか知らんのだ。 そんな違う一面を見せられたら、したくなくても『なぜか』動揺してしまう。 「ねぇ、聞いてるの?」 頬杖を止めてこちらを向いたハルヒの眉がキリキリと上がる。 これでこそ、俺の知っているハルヒだ。 論理的な思考型な俺は、理由を聞いてから何事にも答えるようにしているが、 ハルヒは突飛なことを言う割りにその理由を聞かれると不機嫌になるし、答えようとはしない。 『駆け落ちしよっか?』って言った理由をハルヒに聞くのはナンセンスだ。 …だが、聞いてしまう。 だって、それが俺の思考パターンだからだ。 「聞いてたけど、どうしてまた駆け落ちなんだ?・・・その前にどうして俺なんだ?」 こいつはいつも主語と述語が抜ける。そして、その経緯、説明もない。 まるで”私の思考はアンタには伝わってるから、説明しなくてもいいのよ”みたいな。 あいにく俺は、古泉みたいに超能力者でもないから相手の思考を読み取ったりできない。 …ってアイツは閉鎖空間の中でしか能力使えなかったか。 例えにもならないとは、本当に使えない奴だ。 「キョンなら、着いてきてくれると思ったの!」 恥ずかしそうに目線を外す・・・普通の女の子っぽい仕草も出来たんだな。 って、どうして俺なら着いてきてくれるなんて思ったんだ? 俺の思考を読み取ったかのようにハルヒが続けて口を開いた。 「だって、アタシのいう事素直に聞いてくれるんだもん。だから」 ちょっと待て。この際、俺の長所・性格・人物像は関係なしかよ。 どうみても、ハルヒの主観イメージだけじゃねぇか・・・ しかし、俺が安易に否定すればハルヒはまた不機嫌になるだろう。 古泉・長門・朝比奈さん(大)は口を揃えて、その事を忠告したけど、俺には関係ないし、 どうするかはハルヒ次第なのだから・・・ごく平凡一般の俺がとやかく言っても仕方がない。 まぁ、古泉の言っていたハルヒの言葉をできるだけ尊重するようにしてやんわりと話を流してみるか。 「お前がどうして『駆け落ち』だとか、『樹海に行きたい』とか言ったか分からんが、そんな事しなくても俺は3年間お前にこきつかわれる運命だ」 「いつ、何処で、何時、何分、何秒にアタシがアンタをコキ使いたいって言ったのよ!」 「お前の俺への態度を見たら、誰が見ても奴隷とご主人様みたいな関係に見えるぜ?」 ハルヒが何か言おうとしたので、トドメの一撃を刺しておこうと思う。 「でも、別にお前に使われるのは嫌いじゃない」 ちょっとでも、恥ずかしい台詞を言われるとあたふたして、柄にもなく論理的に否定したり、話変えたりするから この戦法はかなり有効なのだ。・・・しかも、実証済み。 すると、暫くハルヒは何か考え込んだ後、パチンと手を合わせて、俺を指差した。 「決めたっ!アタシに使われるのが好きなら、高校3年間と言わずその後も使ってあげるわ」 「・・・なーんて、事があったんだよ」 部室にて、古泉と将棋を指しながら今日の昼休みにあった事を話した。 …というか、どうしてコイツは手数掛かるのに穴熊作ろうとしてんだ?その間に攻め込まれたら終わりなのに。 「キョン君はまた仕出かしましたね」 なんて、真剣な台詞をにこやかに言う古泉。 続けて「僕のバイトもずっと続きそうですねぇ」なんて言いながら、ため息つきやがって。 「どういうことだよ?俺がなんかやったか?」 俺が質問を投げかけると、古泉は鼻の頭を撫でながらこう言った。 「涼宮さんは新たに思い込んでしまいました・・・いや、決意したと言ったところでしょう。彼女は言ったのでしょう? 『高校3年間と言わずその後も使ってあげるわ』と。その意味は分かりますか?その後とは彼女にとってどれぐらいの期間なんでしょうねぇ。 その言葉を推理して、最も現実的で実現可能な事となると・・・」 「なんだよ」 「キョン君。結婚式には呼んでくださいね。・・・あと、あなたは主夫に向いてますよ」 古泉がまたアホな事を言い出した。 こいつは、推理してるとき自分に酔っているんじゃないかと思うことがある。 推理に気を取られて、将棋がおざなりになっているのはコイツらしい。 「王手・・・はい、どうやっても詰みな。しかし、お前の例えはよく分からん」 「はは、負けちゃいましたね」 自分が負けたのにニコニコとしているのもコイツらしい。 さて、と。ハルヒが朝比奈さんの写真撮影を終えて帰ってくる前に、このフラッシュメモリにmikuruフォルダを移動させておくか。 将棋の片付けをしている古泉がポツリとこう言った。 「あなたは、涼宮さんにプロポーズしてOKされたんですよ。順序から言うと、涼宮さんがプロポーズして、あなたがOKしたというか」 なんて言いながら、クスクス笑う古泉。 今のお前相当キモイ悪いぞ。 fin
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いつからだったのだろう──── ────世界に色がついたのは いつからだったのだろう──── ────静寂に音楽が流れ始めたのは いつからだったのだろう──── ────いつも笑ってられるようになったのは いつからだったのだろう──── ────私の心にあいつが現れたのは ‐ 涼宮ハルヒの羨望 ‐ いつもと変わらぬ日常。 くだらない授業。 適当に聞いとけば満点の取れる内容なんて、ばかばかしくてイヤになる。 くだらない、ほんとにくだらない。 この生活が気に入っている人も居るんだろうケド、私にとってはただの苦痛。 なんで私はここにいるの? なんのために生きてるの? ふと、頭をよぎる当然の疑問。 誰しもが思い、誰しもが感じる、疑問。 ねぇ、なんで? 小さく、ほんとに小さく、誰にも聞こえないように呟いた。 そうすることで、何かが変わる気がしたから。 実際は─── ───言うまでもないケド。 退屈は私を覗き見る。 退屈は私を蝕む。 まるで、私は私自身が置き物のように感じる。 その気持ちに押しつぶされそうになる。 目頭が熱くなる。 私は、世界の部品じゃない。 耐え切れなくなって、前の席を叩く。 「……どーした?」 授業の邪魔にならないように、小さく呟くキョン。 めんどくさそうに、いかにもめんどくさそうにね。 キョン。 「何だ?」 ……なんだろう? 何のためにキョンを呼んだの、私。 こいつと話してると気がまぎれるの? そうなの、私? 「………ハルヒ?」 何よ 「いや、用はないのか?」 あるわけないじゃない。 ないから呼んだんじゃない。 ……あー、我ながら意味わかんないわね。 イライラするイライラするイライラする。 なんかない? 我ながら馬鹿馬鹿しい台詞。 「なんか、ってなんだ?」 なんかはなんかよ 「まず、何をしたいのか俺によくわかるように言ってくれ」 再び私を沈黙が覆う。 私、何がしたいの? …… 「ハルヒ?」 なんでもない。 「……おーい?」 もういい。 私がそう言うと、諦めたのか、前を見る。 そして会話中に黒板に書かれた文章をノートに書き写す。 なんでこいつはこんなに勉強しててあんなに頭悪いの? ばっかみたい。 長く連なる時の流れは私に退屈という名のナイフを突き刺していく。 その苦痛のせいで、寝ることもできない。 何か起こらないかな。 そんなどうでもいいことを望む。 ───あら? 何気なく校庭を眺めると古泉くんが歩いて校門へと向かっていた。 なんだろう、早退かな? 具合は悪そうに見えないから、何か用事でもあるのかな? 古泉くんの帰宅する理由を考えることで多少の気はまぎれた。 でもわかんないから今度聞いてみよう。 覚えてたら、だけどさ? ───キーンコーンカーンコーン やっと。 やっと終わった。 なんでこんなにかかるの。 時と交渉ができるのなら私の時間だけ早く進むようにして欲しい。 あ、楽しいときは別よ? 楽しいときはむしろ時間の流れを遅くして まぁいいわ、ようやく、私の時間だから。 「ハルヒ、さっきはどうしたんだ?」 不意に前の席から声がかかる。 なんでもないわよ、さ、行くわよ 「行くって?」 SOS団に決まってるじゃない! 「あ、ああ」 私は彼を残して教室を飛び出る。 待ちに待った放課後の時間。 待ちに待ったSOS団! さぁ、今日は何をしようかしら。 みくるちゃんにどんな服着させようかな。 そういえば昨日ネットオークションにかけられてたコスプレどーなったんだろう。 落札できてるといいな。 頭からどんどん湧き出る期待を胸に、私は意気揚々と文芸部室へ飛び込んだ。 部屋には有希と着替え中のみくるちゃんがいた。 「やっほぉー!」 「あ、こんにちは涼宮さん」 挨拶はもっと元気よくしなさい! そうね、語尾ににゃんとかつけるといいわ、かわいいから。 30分後、キョンが遅れてやってきた。 遅い! なんで私と同じクラスなのにこんなに遅いのよ! 「ちょっと成績のことで岡部とな」 なんなら私が一から教えてあげてもいいわよ? 丁寧に、かつわかりやすく。 「いい、隣で『なんでこんな簡単なのわかんないのよ、もーぅ』とか言われたくないから」 失礼ね! そんなこと…………ないと思うわよ? 保障はできないけど。 うん、100%なんてこの世に存在しないんだから。 「そういえば古泉は?」 古泉くんならさっき学校を出て行くのが見えたけど? 「古泉一樹は用事のため早退」 あら、有希、聞いてたの? 「昼休みに少しだけ」 理由はわかる? 「不明」 そっか。 楽しい部活の時間が過ぎていく。 有希が本を閉じた。 それは部活終了の合図。 いつも凄く正確で、驚くぐらい。 私は荷物をまとめて部室を出る。 明日は土曜日ね、いつもの場所でいつもの時間に!古泉君にも言っといて。 最後にそう皆に伝えた。 登校の時はキツめの坂道を、私は悠々と、一人で降りる。 ずっと、皆といられたらいいのに。 ふと、立ち止まる。 ずっと、いられたらいいのに? 不意に、不安が、私を掴む。 どうしてこんな気持ちになるの? わからない。 まるで、この日常が壊れることへの不安? 気にしすぎよ、少しは体もやすめないと壊れちゃうわ。 違う。 何が違うのかはわからない。 けど、何か違う。 いつも感じる日常とはまた別。 退屈という名のナイフじゃない。 これは何? 不安で足を早める私。 家について、ご飯を食べても、まだ私に絡みつく。 お風呂を浴びてさっぱりしても、何なのこれ。 部屋の中で電気もつけずに、私は枕を抱きかかえる。 ふと、思いついた。 ピリリリリリリ 「もしもし?」 キョン、私だけど。 「どうした」 ……… まただ、なんで私またキョンに? 「明日、ちゃんと来てよ?」 …今更じゃない、私? キョンは予定をサボったりはしない。 少なくともいつもはそうだったし。 「どーした?」 何が? 「なんか、今日のお前変だぞ?」 気のせいよ。 「…そうか?」 そうよ。 「わかった、明日もちゃんと行く」 絶対よ? 遅刻したらまたおごりだからね! 「遅刻しないでもおごるのは俺じゃねーか」 つべこべ言わないの! 「へいへい、じゃ、また明日な」 あ、キョン。 「ん?どした」 ……なんでもない。 「?」 明日、ちゃんと来なさいよ? 「わかったわかった、んじゃな」 電話が切れる。 なんだろう、この気持ち。 カーテンを開けて、窓の外を見る。 どこまでも広がる、星の瞬く夜空。 3年前に校庭に書いたメッセージは、どこかで誰かが読んでるだろうか。 その日の月は、とても綺麗だった。 ふぁ~。 よく寝た。 夜空を眺めながら、私はカーテンを開けて寝た。 そうすれば私は安心できたから。 昨日、あんなに不安でいっぱいだった頭も、一晩寝たらすごく軽かった。 結局なんだったんだろう、あれ。 まぁいいわ、準備して行きますか。 キョンより早くいかないとね、おごりはあいつ、私じゃないわ。 そこについた時、キョン以外のメンバーはすでにいた。 やっぱりできのいい団員がいると違うわね、うん。 みくるちゃんはやっぱりかわいいわね、私服も。 「そーですかぁ?ありがとうございます」 ほんとにかわいい、もし私が男だったら襲ってるわ、間違いなく。 有希、いつも眠そうだけど、ちゃんと寝れてる? 「大丈夫」 いつも通りの口調で返答される。 ならいいんだけど。 古泉くん、なんで昨日早退したの? 「少し親族のほうに急な用事ができまして」 肩をすくめて笑顔で答える。 ふーん、ま、いいわ。 にしても、キョンはいつも遅いわね。 いっそのこと集合に遅れないように私が毎朝電話してたたき起こしてやろうかしら。 時間が過ぎていく。 遅い! 遅い! 本当に遅い! もう一時間も遅刻してるじゃない! 携帯に連絡しても出ないし! なんなのよもう! それにしても遅いわね! 何してるのかしら! もう一度携帯電話に手を伸ばす。 こうなったら出るまでずっとかけてやるんだから! ピリリリリリリリ…… ガチャッ あら?繋がった? 「ハルヒちゃん?」 出たのは、キョンの母親だった。 なんで? 予想もつかなかった。 考えたくもなかった答えが返ってきた。 うそよ! 公道を私達を乗せた車が疾走しついく 「きっと、大丈夫ですよ、涼宮さん」 ありがとう、みくるちゃん。 そうよね、大丈夫よね。 うん、じゃなきゃ許さないわ。 絶対、絶対許さない。 だって、だって約束したじゃない、今日絶対来るって、昨日。 「もうすぐつきます」 古泉くんが呟いた。 走る窓から病院が見えた。 キョンが倒れた? ありえない。 そんなベタな展開、認めないからね。 さようならも言えずに、サヨナラなんて、そんなの認めないからね! 原因は何? なんで倒れたの? なんでキョンなの? どうして今日突然? 昨日までピンピンしてたじゃない! 病院につくと同時に、私はキョンの入院してる部屋まで駆け出した。 前もあったっけ、こんなこと。 クリスマスパーティの準備中に、あいつがいきなり。 やだ、思い出したくない! いやよ!いやよいやよ、いや! 気を失ったキョンの顔。 でもあの時は、ちゃんと起きたわよね。 そうよ! 今回も大丈夫なはず! じゃなきゃ許さない! 約束したじゃない、来るって! 胸へとつかえる何かを感じながら、私は病室のドアを開いた。 そして感じた、視線。 私を見つめる、妹ちゃんの目。 キョンの母親の目。 お医者さんの目。 そして、 キョン!よかった! キョンが私を見ていた。 意識は戻ってたらしい。 心配かけるんじゃないわよ!バカ! 私はキョンに駆け寄って、まくしたてた。 ホントは別のことを言いたかったけど、とにかく、無事でよかった。 ほんとに、よかった。 なんでそんな目で私を見てるの、キョン。 まるで、初対面を見るような─── 「ごめんなさい、あなたは、誰ですか?」 ―――――嘘って言ってよ 私は望んでいただけ そしてあいつは、それに応えてくれていた 私は調子に乗っていたのかもしれない 一度も、あいつの事を考えてあげなかった いや、考えてはいたのよ でも、結果的に、私はあいつを蝕んでいた そして、あいつが手のひらからこぼれおちた時 ようやく、そのことに、気がついたの キョン? 「キョンというのは、俺のことですか?」 何言ってるの? キョンはキョンよ、あなたでしょ 「すみません」 なんで謝るの? なんで?なんで?なんで? 「ごめん、なさい」 胸が痛む。 本当にキョンは申し訳なさそうな顔をする。 やめてよ。 「え?」 こんなの、キョンじゃない…… 「落ち着いてください、涼宮さん」 …みくるちゃん 「少し、話をしてもいいですか?涼宮さん」 キョンに聞こえないように私に呟く古泉くん。 古泉くん、話って何? 「彼の記憶喪失の原因についてです」 記憶、喪失? キョンが? うそよ、何それ。 何それ何それ何それ。 もしかしてそれが倒れた原因? 「医師の話によると倒れた理由も記憶を失った理由も同じらしいです。」 廊下で医師から一通りの説明をうけたあと、私は古泉くんと話していた。 古泉くんが続きを述べ始める。 「彼の精神は極度に疲労していた、それが倒れる原因になったと」 疲労? だって、そんなそぶりは一度も。 「長い間に蓄積されたものらしいです。」 どういうこと? 「例をあげて説明しましょう。 フラッシュバックというものがあります。 麻薬の一部には使用することで幻覚を見るものがあります。 その時の感覚が忘れられず人は使用を繰り返し、何度も使用するうちに麻薬は人の体を蝕みます。 重度の中毒者になった場合は、麻薬の恐ろしさに気づきやめるでしょう。 しかし、たとえ長い時間をかけて回復しても、ふとしたきっかけで全てが麻薬をしていた状態に戻ってしまうことがあります。 それが、フラッシュバックです。」 必死に理解する。 「つまり、彼の中には長い間精神的疲労、言わばストレスがたまっていきました。 しかし、そのストレスは小さなもので、簡単に消えていったはずです。 それが、何かのきっかけで消えたはずのストレスが一気に戻ったとします。 いわばストレスのフラッシュバックと言いましょうか、そうして、彼は倒れたのです。」 どうして? つまり悩みを抱えていたんでしょ? どうして私に言ってくれなかったの? 「それは、おそらく」 そこまで言って、古泉くんは口を閉ざした。 いつになく真剣なまなざし。 知ってるの? じゃあ、教えて。 「だめです」 なんで 「だめなんです」 教えないさいよ! 「涼宮さん……」 いいから、教えろって言ってんでしょうが!! ふと、気がつけば有希が隣に立っていた。 何? 「あなたは、知るべきではない」 何それ なんでよ? 「後悔する」 なんで? 「選択して」 何を 「知りたい?」 当たり前じゃない 「わかった」 「長門さん……」 「彼女は選んだ、知ることを。 だから伝える。」 「……わかりました」 「彼のストレスの原因は、」 私は言葉を待った。 沈黙で耳が痛くなった。 「あなた」 わたし? なんで、私なのよ。 「本当に、おわかりでないんですか?」 何を。 真剣なまなざしで、いつもと違う、怖い顔で私を見る古泉くん。 「彼はいつもあなたに合わせてきました」 ………… 「そしてあなたはまれに彼の精神レベルを超えた要求をしていたんです」 ………て 「それが彼のストレスとなった」 ……めて 「彼はあなたにこたえるために、いつも無理をしてきた」 …やめて 「彼はお人よしですからね」 やめて! 私は気がついたら両耳を抑えて叫んでいた。 「知ることを選んだのは、あなたです」 古泉くんは私に追い討ちをかける。 「だから伝えました、真実を」 いつからだったのだろう──── ────世界に色がついたのは いつからだったのだろう──── ────静寂に音楽が流れ始めたのは いつからだったのだろう──── ────いつも笑ってられるようになったのは いつからだったのだろう──── ────私の心にあいつが現れたのは いつからだったのだろう──── ────私の中のあいつがこんなにも大きくなっていた いつからだったのだろう──── ────あいつは、私にとって必要な人になっていた …ごめんね 私は泣いてた。 ごめんね、ごめんね、キョン 俯いて、両手で、顔を覆って。 ごめん、ごめん、ごめんなさい 有希が、倒れこもうとする私の体を支える。 「今日は、もう帰りましょう」 古泉くんがいつもの優しい口調になって喋る。 「あなたも、少し休むべきです」 うん、ごめんね。 「大丈夫です、おそらく一時的な記憶の混乱です、すぐに治りますよ」 そうね。 治ったら、いいな。 うぇえ… 「涼宮さん…」 どうやって帰ったのか覚えていない ただ、体がすごく重たかった ご飯は、全然おいしくなかった お風呂は、全然気持ちよくなかった どれだけ泣いたんだろう 枕は涙でびしょびしょだった でも、涙は枯れなかった 枯れてくれなかった 枯れるどころか、どんどん溢れでる 私にとって、それほどに大きくなってたんだ キョン 私は呟いた そして、泣き疲れて、寝てしまった 闇が、私を包んでいく 再び目を覚ましたとき、灰色の空の下、私は駅前の公園に居た。 そして、キョンがそこにいて、私を見ていた。 前にも似たような夢を見た。 夢よね? 夢、だよね? 目の前に立つキョンが私を見つめる。 私は耐えられなくなって視線を逸らす。 「ここは?」 キョンも驚いたような声を上げる。 当たり前よね、なんで私夢の中でまでキョンに迷惑を── 「ここは、覚えてる」 キョンが呟いた。 私は、はっとして彼を見据えた。 覚えてるって? 「なぜかはわからない」 キョンは私と目を合わせた。 私は今度は逸らさずに彼の瞳を見据えた。 申し訳なさそうな、でも、力強い瞳。 「ここに来なきゃいけない気がしたんです」 なんで? 「約束したから……」 私は、また泣いた。 ありがとう、覚えててくれて。 声を上げて泣いた。 ごめんね?ごめんね? ほんとに、ごめんなさい 私のせいで、私の、せい、で ふと、私の体がひっぱられた。 背中にキョンの左手が回される。 頭をキョンの右手が撫でる。 暖かい。 ありがとう。 ありがとう。 ありがとう。 もう少し、このままで。 「何、泣いてんだハルヒ」 ――――っ!キョン? じっとあいつの顔を見つめる。 いたずらっこみたいな表情で私を見る。 もしかして、記憶が? 「迷惑かけたようだな、悪ぃ」 軽く悪びれたそぶりで語るキョン。 迷惑? 迷惑かけたのは私のほうなのに? 「ハルヒ?」 私は、あなたにむりをさせたのよ!? 私は、あなたにわがままを押し付けたのよ!? 私は、私は、私は、あなたを、縛り付けたのよ!? 私、あなたに………謝りたかった 「ハルヒ」 何? キョンが私の目を見る とても力強く、決心したように。 私を抱いていた手に、力が入る。 痛いぐらいに、でも暖かい。 「どうして、俺がお前のわがまま聞いてたか、知ってるか?」 え? 「お前のことが大切だったからだ」 ………キョン? 「ハルヒ、俺はな、お前のことが──── え。 ふいに、目を覚ました。 頬を伝う涙。 体に残るあいつの温もり。 ベッドから降りる。 携帯を鳴らす。 再び、彼のもとへ 今度こそ、言えなかった言葉を。 ごめんね、と。 ありがとう、と。 そして───── ピリリリリリリ…… カチャッ 「もしもし?」 キョン? 「どうした?わがままな団長さん」 - 涼宮ハルヒの羨望 終 - 涼宮ハルヒの羨望、外伝 笑ってくれる 私のために 私みたいなわがままなヤツのために 嬉しかった すごく嬉しかった 私のわがままにつきあってくれる それがたまらなく嬉しかった ある雨の降る放課後 私とあなたしかいない部室 寝ているあなたにそっと呟いた ――――ありがとう ‐ 終 ‐
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ハルヒ「なに!?なんなのこれ?ちょっとキョン? 来なさい!3秒以内!!」 インターネットサーフィンをしていたハルヒが突然騒ぎ出した。やれやれ。 キョン「お前ももう少しパソコンの使い方覚えろよ・・・ って!なんじゃこりゃあ!!!!」 俺は思わず叫び出した。 パソコンがフリーズしたかと思ったら、なんとそこに画面いっぱいに朝比奈さんのメイド服と、長門のカメラ目線のアップと、ハルヒの指をこちらに向けて踊っている写真がポップアップで出ていたのである!! 朝比奈さんが万が一自分のこんな写真が全世界に流れていると知ったら、おそらく卒倒してしまうであろう。 キョン「ウイルスだな・・・しかし何だってこんな― 長門 「見せて」 カタカタカタカタ・・・ 長門 「行ってくる」 キョン「オイ行くってどこに!?待て!」 長門 「すぐそこ」 そう言うと、長門は部室を出て行ってしまった。 うーん。なにが分かったのだろうか。 直後、隣の部屋から声が聞こえてきた。 「いらっしゃい。あ!長門さん!待ってたよ!」 『ドカーン、バゴーン、ズガーン!!』 「長門さん!?止めてくれ!」 『ドガーン!』 「済まなかった!あやまr」 『ドーン!』 「ごめんなさいごめんなさいごめんなs」 『ドカーン!』 コツ、コツ、コツ。 長門 「ただいま」 キョン「よう、早かったな。久々のコンピ研はどう だった?」 長門 「ユニーク・・・」 ―翌日― コンピ研が無期限活動停止処分になったのは言うまでも無い。 涼宮ハルヒのウイルス 完